生成 AI を理解する 14 の基礎用語:初心者のための入門ガイド

生成 AI を理解する 14 の基礎用語:初心者のための入門ガイド

昨今、 ChatGPT をはじめとした生成 AI が大きな注目を集めており、多くの企業が生成 AI をビジネスに活用しています。しかし、生成 AI には様々な関連用語が存在するため、聞き慣れない言葉を耳にするケースも多いのではないでしょうか?

そこで本記事では、生成 AI の入門ガイドと題して、生成 AI に関連する 14 の基礎用語を一挙にご紹介します。生成 AI について理解を深めたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

生成 AI とは?

まずは、生成 AI の概要について理解しておきましょう。

生成 AI とは、コンピュータープログラムが自らデータや情報を生み出す能力を持つ、次世代の AI を意味する言葉です。従来の AI では、主に学習済みデータから適切な回答を見つけることに重点を置いていましたが、生成 AI は新しいデータやコンテンツを作り出すことが可能であり、ゼロから一を生み出す能力が大きな特徴です。

一般的な生成 AI は、広範なトレーニングデータに基づいて反復学習を行うことで、新しいデータやコンテンツを生成できるように設計されています。有名な生成 AI としては、 OpenAI 社の ChatGPT が挙げられますが、これはテキストデータをもとに新しい文章を自動的に生成できるものです。

ただし、 ChatGPT の最新モデルである GPT-4o (正式名称: GPT-4 omni )は、マルチモーダルモデルとして提供されているため、この点は覚えておきましょう。マルチモーダルとは、テキストや音声、画像など、複数の異なるソースから情報を収集し、統合して処理する仕組みのことであり、 Google が 2023 年 12 月に発表した最新の生成 AI モデル「 Gemini 」も、このマルチモーダルに対応しています。

このように、テキストだけではなく、画像や動画を自動生成できる AI も存在し、マーケティング活動におけるコンテンツ作成やテレビ CM など、あらゆるシーンで活用されています。企業が業務効率化や生産性向上を実現し、自社のビジネス成長に繋げるためには、生成 AI が有力なツールになると言えるでしょう。

生成 AI の基礎用語集

生成 AI の基本を理解したところで、次に生成 AI の基礎用語をご紹介します。どれも重要なキーワードであるため、確実に内容を理解しておいてください。

1.モデル

AI におけるモデルとは、データをもとにパターンやルールなどを学習し、それらを使って新しいデータに対する予測や判断を行うための仕組みを意味します。一般的な AI モデルは、特定のアルゴリズム(事前に定められた処理方法)によってデータ分析を行うように設計されており、画像認識や音声認識、文章生成など、特定のタスクを実行するために作られています。

2.Generative AI

Generative AI (ジェネレーティブ AI )は生成 AI と同義の言葉として使われています。両者に意味の違いはなく、どちらを使っても間違いではありません。

つまり、 Generative AI は生成 AI の英語版であり、生成 AI と同じ意味を持つ用語だと理解しておきましょう。なお、本記事では「生成 AI 」という表記に統一しているため、この点はご承知おきください。

3.マルチモーダル AI

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マルチモーダル AI とは、テキストや画像、音声など、複数のデータ形式を組み合わせてコンテンツを生成できる次世代の AI です。従来の生成 AI では、テキストや画像といった特定のデータのみを取り扱うことが一般的でした。

しかし、マルチモーダル AI はテキストと画像、音声と動画など、異なる種類のデータを同時に処理し、それらの相互関係を理解したうえで適切なアウトプットを返すことができます。これにより、シングルモーダル AI では捉えきれないような、複雑な状況やニュアンスを把握することが可能になります。

マルチモーダル AI に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:マルチモーダル AI とは?仕組みやメリット、活用事例などを一挙にご紹介!

4.LLM (大規模言語モデル)

LLM は「 Large language Models 」の略であり、日本語では「大規模言語モデル」と呼ばれています。大規模言語モデルという名前の通り、 LLM は非常に大規模なデータをもとに学習を行います。

具体的な学習データの例としては、 Web 上のコーパス(自然言語の文章・使い方などを広く収集し、コンピュータで検索できるように整理されたデータベース)や書籍、ニュース記事、会話ログなどが挙げられます。

昨今、 LLM の活用シーンは多岐にわたり、

など、あらゆる場面で LLM の活用が進んでいます。

LLM に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:LLM (大規模言語モデル)の仕組みとは?生成 AI との違いや活用事例などを一挙に紹介!

5.ファインチューニング

ファインチューニングとは、既に学習済みの AI モデルに対して、特定のタスクに特化したデータを用いて調整を加えるプロセスを意味します。これにより、 AI モデルは特定の業界やアプリケーションに適した精度・性能を発揮できるようになります。このように、生成 AI のパフォーマンスを向上させるためには、ファインチューニングが重要な要素の一つになると言えるでしょう。

ファインチューニングに関しては以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:ファインチューニングとは? AI モデルをカスタマイズするための方法を徹底解説!

6.事前学習

事前学習とは、大規模なデータセットを用いて AI モデルをトレーニングすることであり、モデルトレーニングのプロセスの中で最初に実施されることが一般的です。 AI モデルは事前学習によって基本的な言語や画像認識の能力などを学び、その後にファインチューニングで特定のタスクに適応するための調整が行われます。このように、事前学習は生成 AI の性能・パフォーマンスに大きな影響を与えるため、慎重に作業を進める必要があります。

7.AI ハルネーション

AI ハルシネーションとは、 AI が学習データから得た知識・経験に基づいて、実際には存在しない情報や事実を生成してしまう現象を意味する言葉です。これは、 AI が学習データの偏りや不足、あるいはモデル自体の問題などによって、現実とは異なる解釈や推論をしてしまうために発生することが一般的です。

例えば、 AI が「猫は象よりも大きい」という誤った結論を導き出した場合、使用した学習データに猫や象の大きさに関する情報が不足していたり、猫の画像が象の画像よりも多く含まれていたりするなど、アウトプットのもとになる情報が不十分である可能性が高いです。

上記の例であれば、出力結果が間違っていることは明らかですが、内容によっては一目で正誤を判断できない場合もあるため、 AI の回答を正しいと思い込んでしまう危険性があります。このように、 AI ハルシネーションは、 AI を活用する際の代表的なリスクだと言えるでしょう。

AI ハルシネーションに関しては以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:AI 活用の落とし穴? AI ハルシネーションの原因・対策をわかりやすく解説!

8.プロンプトエンジニアリング

プロンプトとは、 AI に指示を与えるためのテキスト情報を意味する言葉です。昨今、大きな注目を集めているテキスト系の生成 AI を例にとれば、「鎌倉幕府について詳しく説明してください」や「次の文章をわかりやすく要約してください」のような指示文がプロンプトに該当します。

そして、プロンプトエンジニアリングとは、 AI から適切な回答を引き出すために、どのようなプロンプトを記述すればよいのかを分析・研究する学問分野のことです。具体的かつ正確なプロンプトは AI の効果最大化に繋がるため、プロンプトエンジニアリングはとても重要な取り組みであると言えます。

プロンプトエンジニアリングに関しては以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:プロンプトエンジニアリングとは?基礎から応用まで重要なポイントを一挙に紹介!

9.AI TRiSM

AI TRiSM は 「 AI Trust 、 Risk 、 and SecurityManagement 」を略した言葉であり、 AI 利用に伴うリスクや課題を管理し、信頼性の高い AI システムを構築するためのフレームワークです。

AI 技術が急速に発展し、私たちの生活やビジネスに大きな影響を与えるようになってきた一方で、 AI の倫理的な問題やリスクに対する懸念も高まっています。そこで生み出されたのが AI TRiSM の概念であり、前述したような様々な課題に対処し、 AI 技術を安全かつ倫理的に活用するための有効な指針となります。

AI TRiSM に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:AI TRiSM のメリットや構成要素とは?導入するために必要な 5 つのポイントを解説!

10.RAG( Retrieval Augmented Generation )

RAG( Retrieval Augmented Generation )とは、 AI による生成型タスクを行う際に、外部の情報源から関連データを取り込むことで、応答の精度を向上させるための技術です。例えば、質問応答システムにおいて、データベースからの情報を参照し、より詳細な回答を生成するようなケースなどが該当します。

その他にも、法律分野や医療分野などの特定領域の情報を AI に取り込めば、専門知識が求められる文章作成を自動化できます。このように、 RAG は生成 AI の品質向上に繋がるため、質の高いコンテンツを生み出したい場合には、 RAG が有効な手段の一つになると言えるでしょう。

RAG に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:RAGとは?仕組みやメリット、注意点などを徹底解説!

11.ベクトル検索

ベクトル検索とは、データを数値ベクトルに変換し、そのベクトル間の距離を計算して類似性を測定するための検索手法の一つです。主に、生成 AI で画像やテキストなどを検索する場合において、内容に基づく検索結果を得るために用いられることが一般的です。

ベクトル検索に関しては以下の記事で詳しく解説しています。

関連記事:ベクトル検索とは?類似性検索との違いやメリット、ユースケースまで徹底解説!

12.Transformer

Transformer とは、 2017 年に Google の研究者によって発表された論文「 Attention Is All You Need 」で紹介された深層学習モデルであり、主に自然言語処理の分野で大きな役割を果たしています。 Transformer の特徴としては「自己注意機構」が挙げられ、これは AI に入力された情報の中でどの部分が重要なのかを判断し、モデルが効率的に情報を処理できるようにする仕組みのことです。

Transformer を活用することで、文脈内の単語・フレーズの関連性を効果的に理解できるため、生成 AI の精度向上に繋がります。また、 Transformer は並列処理を実行できることから、従来のモデルと比較して高速なトレーニングが可能であり、大量のデータを扱う AI アプリケーションにも適しています。

13.パラメータ

パラメータとは、 AI モデルが学習を通じて調整する数値のことであり、 AI がどのように入力データを処理し、最終的にどのような出力を生成するのかを決定する重要な要素です。画像生成 AI を例にとれば、画像のピクセル配置や色表現などがパラメータによって調整されます。

パラメータが多いほど、 AI モデルはより複雑かつ細かい表現を学習できるようになりますが、その反面、必要な計算リソースやトレーニング時間も増加します。そのため、生成 AI を効率的に活用するためには、適切なパラメータ設定が必要不可欠だと言えるでしょう。

ただし、通常はモデルの設計時にパラメータ数が決定され、学習プロセスを通じてパラメータ自体が最適化されます。そのため、ユーザーが直接パラメータを設定することはなく、学習実行前に行うハイパーパラメータ( AI が学習を行う前に人間が予め設定するパラメータ)の設定が重要なポイントになります。

14.特徴量

特徴量とは、データにおける重要な部分やパターンなどを意味する言葉です。例えば、テキスト生成においては、単語やフレーズなどが特微量として扱われており、 AI はこれらの特徴量を通じて文章の意味や構造を理解し、新しいテキストを生成します。

適切な特徴量を選ぶことで、 AI モデルはデータの本質をより深く理解できるようになり、正確かつクリエイティブな生成が可能になります。その一方、不適切な特徴量を選択した場合、モデルのパフォーマンスが低下するリスクがあるため、生成 AI を活用する際には、特徴量を慎重に決めることが大切です。

生成 AI 活用の失敗事例

某 IT 企業では、社員向けの FAQ サイト構築に生成 AI を活用していました。

自社商材の仕様・プランに関する質問や顧客向け提案書の置き場など、営業が欲しい情報を一元的に取得するためのプラットフォームを生成 AI で構築しており、人件費削減や業務効率化の実現に向けた AI 活用プロジェクトの一環としてテスト運用が行われていました。

プラットフォームの仕組みはとてもシンプルであり、 ChatGPT のように社員が欲しい情報をテキストベースで AI に質問します。例えば、「商材 A のプラン一覧がまとまっている資料が欲しい」のようなプロンプトを AI に与えると、その指示に沿った回答を AI が返してくれます。

しかし、テスト運用が進んでいくにつれて、次第に AI ハルシネーションが発生するようになりました。実際には存在しないプランを案内したり、指示内容と異なる商材の資料置き場を指定したりするなど、事実とは異なる内容や利用者の意図とかけ離れた回答を返すようになってしまったのです。

そして、エンジニアが調査したところ、学習データの不足が主な原因でした。同社が取り扱っている商材は数百種類を超えており、その中には学習データが存在しない商材が含まれていることがわかりました。

そのため、 AI が適切な回答を返すことができず、誤ったプランを案内したり、異なる商材の情報を回答したりしていたのです。これを受けて、 AI 活用プロジェクトのテスト運用は一時停止となり、 AI モデルを一から再学習することが会社全体で決まりました。

このように、生成 AI はただ使えばよいというものではなく、適切な事前学習と運用があってこそ、高い効果を発揮するツールだと言えるでしょう。

まとめ

本記事では、生成 AI の入門ガイドと題して、生成 AI に関連する 14 の基礎用語を一挙にご紹介しました。

企業が生成 AI を活用することで、業務効率化や生産性向上など、様々なメリットを享受できます。この記事を読み返して、生成 AI の関連用語や活用時の注意点など、重要なポイントを理解しておきましょう。

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本記事を参考にして、生成 AI の導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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