ベクトル検索とは?類似性検索との違いやメリット、ユースケースまで徹底解説!

ベクトル検索とは?類似性検索との違いやメリット、ユースケースまで徹底解説!

昨今、 AI の重要性が強く叫ばれており、様々なビジネスシーンで AI が有効活用されています。そして、 AI の精度を高めるためには、ベクトル検索や類似性検索などの検索技術が重要なポイントの一つになります。

本記事では、ベクトル検索や類似性検索の概要に加えて、ベクトル検索の仕組みやメリット、ユースケースなど、あらゆる観点から一挙に解説します。自社で AI 活用を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。

ベクトル検索とは?

ベクトル検索とは、従来のキーワード検索とは異なり、データ同士の類似性をもとに検索結果を提供する技術のことです。具体的には、文章や画像などのデータをベクトルという数値表現に変換し、それらを比較して類似したものを検索します。

従来のキーワード検索は、特定の単語やフレーズなどを含むデータを見つけるのに優れていましたが、ベクトル検索はデータの意味やコンテキストをより深く理解できるため、さらに高度な検索が可能になります。これにより、検索結果がユーザーの意図に近いものとなり、特に画像検索や自然言語処理の分野で効果を発揮します。

例えば、特定の製品画像をもとに、その画像に似た他の製品を検索したい場合、ベクトル検索を使えば、単に同じキーワードが含まれているデータだけではなく、視覚的に似ている製品を見つけることができます。

このように、ベクトル検索はより直感的かつ高精度な情報検索を実現するための技術となっています。今後、 AI や機械学習の発展とともに、ベクトル検索の重要性はますます高まることでしょう。

類似性検索とは?

類似性検索とは、データそのものの特徴やパターンに基づいて、似たデータを見つける技術です。従来のキーワード検索が特定の単語やフレーズに基づいてデータを検索するのに対して、類似性検索はデータそのものの特徴やパターンなどに注目します。技術的には、データをベクトル化し、コサイン類似度やユークリッド距離などを用いてデータ同士の類似度を計算します。

例えば、画像検索において類似性検索を活用することで、特定の画像に似た形状・色合いを持つ他の画像を見つけることができます。また、テキストの類似性検索では、ある文章の意味に近い内容を持つ他のテキストを探し出すことが可能です。

昨今、類似性検索はデジタルコンテンツの増加とともに大きな注目を集めており、 EC サイトにおける類似商品の検索やドキュメント管理システムでの関連文書の発見、さらには音楽や動画のレコメンデーションなど、様々なシーンで活用されています。

ベクトル検索と類似性検索の違い

ここまで、ベクトル検索と類似性検索の概要について解説しましたが、データの類似性に注目している点が両者の共通点でした。ただし、ベクトル検索と類似性検索は完全に同義の言葉というわけではありません。

ベクトル検索では、画像や文章を数値の集合に変換し、これらの数値をもとに似たデータを見つけ出します。この時、データ同士の距離が重要な要素であり、距離が近いほど似ている情報だと判断されます。

一方、類似性検索もデータの特徴やパターンをもとに似ているデータを検索しますが、データをベクトル化せずに類似したデータを探す手法も存在します。例えば、画像の色や形、テクスチャーなどの特徴をもとに似た画像を見つけるようなケースが該当し、この場合は数値ベクトルを使わずにデータの要素や特性などに着目します。

このように、ベクトル検索はデータを数値ベクトルに変換して、その数値的な距離に基づいて似たものを探す手法であり、類似性検索は特定のデータと類似しているデータを探すための手法を全般的に意味する言葉です。そのため、類似性検索に含まれる手法の一つがベクトル検索だとご理解ください。

ベクトル検索の仕組み

本章では、主にベクトル検索に焦点を当てて具体的な内容をご説明します。

ベクトル検索の種類は多岐にわたり、

など、様々な手法が存在しますが、ここではベクトル検索の中のコサイン類似度という手法について深掘りして詳しく解説します。

例えば、乗り物の「大きさ」と「速さ」の 2 軸をもとに数値ベクトルで表現してみましょう。なお、ここではベクトル検索の一例として数値を割り当てているだけなので、現実上の大きさや速さと若干の誤差がある点はご了承ください。

乗り物

大きさ

速さ

自転車

2

3

二輪車(バイク)

3

9

自動車

4

10

電車

15

8

新幹線

14

20

飛行機

22

20

そして、上表で設定した数値ベクトルを二次元のベクトル空間にマッピングすると下図のようになります。この図では、大きさを縦軸、速さを横軸として設定しています。

No.019.png

上図を見ると、二輪車(バイク)と自動車は大きさと速さがほぼ同じであり、 θ1 の角度が小さいことがわかります。一方、電車と新幹線は大きさは同じくらいですが、速度に 2 倍以上の差があるため、 θ2 の角度は大きくなります。つまり、二輪車(バイク)と自動車は類似したデータであり、電車と新幹線は差異が大きいデータということになります。

このように、データを数値ベクトルに変換して、それぞれの類似性を可視化しながら測定することで、より精度の高いアウトプットを出力結果として返せるようになります。ベクトル検索は AI のパフォーマンス向上や信頼性の担保に繋がるため、 AI 活用時の有効な武器になると言えるでしょう。

ベクトル検索の活用メリット

ベクトル検索を行うことで、具体的にどのような恩恵を受けられるのでしょうか?本章では、ベクトル検索の活用メリットについてご紹介します。

高精度な検索を実現できる

ベクトル検索は、データをベクトルとして数値化し、類似度を計算することで検索を行います。これにより、単なる文字列の一致だけではなく、文章や画像が持つ「意味」を捉えた高精度な検索が可能になります。例えば、同じ内容でも表現が異なる場合や、類似したコンセプトを含むデータを見つけたいようなシーンで有効的に活用できるでしょう。

多様なデータ形式に対応できる

ベクトル検索はテキストだけでなく、画像や音声、動画など、様々なデータ形式に対応できる点が大きなメリットです。これにより、特定の画像に似た画像データを探したり、特定の音声と類似している音声データを見つけたりと、従来のキーワード検索では不可能だった複雑な検索を実行できます。データの多様化が進む現代において、形式の異なるデータを一元的に有効活用できるベクトル検索は、自社のビジネスを成長させるための強力な武器になると言えるでしょう。

ユーザー体験の向上に繋がる

ベクトル検索を活用すれば、ユーザーにとって直感的で使いやすい検索体験を提供できるようになります。例えば、 EC サイトでユーザーが特定の商品画像を選択した場合、その商品に似たアイテムを即座に表示するようなケースが考えられます。これにより、ユーザーはキーワードを入力する手間なく、視覚的な情報をもとに関心度の高い商品を見つけることができ、検索体験が大幅に向上します。

ベクトル検索のユースケース

現在、ベクトル検索は様々なシーンで活用されています。本章では、ベクトル検索の具体的なユースケースを 3 つご紹介します。

画像検索エンジンでの類似画像検索

ベクトル検索は、画像検索エンジンでの類似画像検索に大きな効果を発揮します。具体例として、ファッション領域の EC サイトでベクトル検索を活用すれば、特定の洋服やアクセサリーの画像をもとに類似デザインの商品を検索できるようになります。これにより、ユーザーは関心度の高い商品を簡単に探せるため、購買意欲の向上に繋がります。

自然言語処理による関連文書検索

ベクトル検索は文章の意味を理解し、類似した内容の関連文書を探し出すのにも利用されています。例えば、法律文書の検索や学術論文のリサーチなど、膨大なテキストデータの中から、関連性の高い資料を見つける際に有効活用できます。これにより、リサーチの効率が飛躍的に向上し、ユーザーは必要な情報を迅速に入手することが可能になります。

レコメンデーションシステムにおける関連商品の提案

レコメンデーションシステムにおける関連商品の提案も、ベクトル検索の代表的なユースケースの一つです。例えば、音楽配信サービスでベクトル検索を使うことで、ユーザーが好むアーティストや曲の特徴をベクトルで数値化し、類似した楽曲をレコメンドできます。その結果、ユーザーの好みに合わせた新しい発見を提供できるようになり、サービスの利用頻度を高められます。

ベクトル検索導入の進め方

ベクトル検索を導入し、効果的に活用するためには、計画的にプロジェクトを進める必要があります。本章では、ベクトル検索の進め方を 5 つのステップに分けて解説します。

Step.1 目的の明確化とデータ収集

はじめに、ベクトル検索の導入目的を明確化することが重要なポイントになります。例えば、 EC サイトの商品検索の精度向上や文書管理システムでの関連資料検索の効率化など、具体的なニーズをもとに目的を定義しましょう。

その後、設定した目的に合わせて必要なデータを収集します。この時、画像やテキストなど、ベクトル化するデータの形式を適切に選定し、大量のデータを集めることが大切です。

Step.2 データの前処理とベクトル化

次に、収集したデータをベクトル化するための前処理を行います。具体的には、画像の場合はサイズの統一、テキストであればストップワード(検索処理に関連する内容を持たないワード)の除去などが挙げられます。

その他、データの前処理は多岐にわたり、

など、様々なものが挙げられます。

これらの前処理を行うことで、精度の高いベクトル化を行えるようになります。そして、機械学習やディープラーニングなどのモデルを用いて、データをベクトルに変換します。

また、ベクトル化を効率的に行うためには、各種ツールの導入が有効な選択肢になります。例えば、 Google の Word2Vec や FastText 、 BERT などの自然言語処理モデルは、テキストデータを数値ベクトルに変換するのに役立ちます。

これらのツールは単語の意味を保持しつつ、テキストデータを数値ベクトルに変換してくれるため、意味的に関連性のあるデータ同士を近い距離に配置することができ、結果として高精度な検索結果を得られるようになります。

Step.3 類似度計算の設定

ベクトル化が完了したら、ベクトル化されたデータ同士の類似度を計算するためのアルゴリズムを設定します。ユークリッド距離やコサイン類似度など、類似度計算の手法は多岐にわたるため、タスクの内容や使用するベクトル表現の特性、計算効率などに応じて、計算方法を選択するのがよいでしょう。

なお、類似度計算の代表的な手法については、記事後半で簡単にご説明しています。

Step.4 検索インターフェースの構築

次に、ユーザーがベクトル検索を簡単に利用できるよう、使いやすい検索インターフェースを構築します。この時、直感的に操作できるデザインや検索結果の表示方法などに配慮することが大切です。また、検索精度を向上させるためには、フィルタリング機能や検索結果の絞り込みオプションなどを追加することも有効な選択肢になります。

Step.5 効果検証と継続的な改善

最後に、ベクトル検索が実際に期待通りの効果を発揮しているかを検証します。ユーザーのフィードバックや検索結果の分析を行い、課題や問題点などを特定しましょう。そして、必要に応じてアルゴリズムやインターフェースの調整を行い、継続的な改善を図ります。これにより、ベクトル検索の効果を最大限に引き出し、ユーザー満足度を高めることができます。

ベクトル検索を行う際の注意点

ベクトル検索は強力なツールですが、効果的に運用するためには注意すべきポイントがいくつか存在します。本章では、ベクトル検索を行う際の注意点を 3 つご紹介します。

データの質と量の確保

ベクトル検索の精度は、ベクトル化されるデータの質と量に大きく依存します。例えば、ノイズの多いデータや偏ったデータをベクトル化すると、正確な検索結果を得られない可能性があります。

そのため、データを収集・整理する際には、ノイズが入っていない多様なデータを用意することが大切です。また、データ量が不十分な場合、検索結果が限定的になり、思うような効果を発揮できないこともあるため、必要に応じてデータ量を増やすための工夫が求められます。

適切な類似度計算の選択

ベクトル検索では、類似度計算の方法を適切に選択することが重要なポイントになります。前述したユークリッド距離やコサイン類似度など、類似度計算の手法は多岐にわたるため、データの特性や検索の目的に応じて最適な方法を選ぶ必要があります。

以下、代表的な類似度計算の手法を表にまとめます。

手法

概要

ユースケース(一例)

ユークリッド距離

異なる 2 つの点の直線距離で計算

ユーザーの行動データの違いを測定

マンハッタン距離

縦横に沿った道のりの合計距離で計算

株価の変動幅を測定

コサイン類似度

2 つのベクトルの角度で計算

文書や画像の類似性を測定

ジャッカード係数

2 つの集合における共通項の割合で計算

ユーザーの共通の関心事やタグの重複度合いを測定

このように、適切な類似度計算の手法を選択することで、検索結果の精度向上に繋がります。

計算コストと検索速度のバランス

ベクトル検索は高度な計算を伴うため、計算コストと検索速度のバランスに注意を払う必要があります。特に膨大なデータセットを扱う場合、検索に多くの時間を要するため、これを防ぐためにはインデックスの作成や効率的なアルゴリズムの採用など、検索速度を最適化するための工夫を施すことが大切です。

また、ベクトル検索において高速で正確な検索結果を得るためには、近似近傍探索を行うことも重要なポイントです。膨大なデータセットの中から似たようなデータを瞬時に見つけるためには、すべてのデータを精密に比較するのではなく、効率的に類似性を評価する方法が求められます。近似近傍探索は、完全な精度を犠牲にしつつも、非常に高速な結果を返すことで、リアルタイム処理が求められるシステムや、ユーザー体験を重視する検索エンジンなどで大きな役割を果たします。

さらに、ベクトル検索のパフォーマンスを左右する要素の一つとして、データベースの最適化技術が挙げられます。データベースの構造を効率的に設計することで、検索クエリの処理時間を大幅に短縮できます。例えば、インデックスの構築方法やパーティショニング、キャッシング技術の活用など、データアクセスの効率化を実現するための最適化などが挙げられます。

このように、計算コストと検索速度のバランスを適切に保つことで、自社の経済的な負担を最小限に抑えつつ、ユーザーにとって快適な検索体験を提供できるようになります。

まとめ

本記事では、ベクトル検索や類似性検索の概要に加えて、ベクトル検索の仕組みやメリット、ユースケースなど、あらゆる観点から一挙にご説明しました。

ベクトル検索を活用することで、高精度な検索やユーザー体験の向上など、様々なメリットを享受できます。この記事を読み返して、具体的なユースケースや進め方を理解しておきましょう。

なお、今回ご紹介したベクトル検索は、全世界で圧倒的なユーザー数を誇る Google 検索でも使用されている技術です。グローバル規模の有名サービスである Google 検索で採用されている点からも、ベクトル検索の有用性を伺うことができます。

そして、ベクトル検索を効率的に行うためには、 Google Cloud がおすすめのソリューションになります。 Google Cloud とは、 Google が提供しているパブリッククラウドサービスであり、 Vertex AI をはじめとしたベクトル検索に役立つ AI ソリューションが搭載されています。

当社 G-gen では、

など、企業様のビジネスを加速させるための幅広いサポートをワンストップで提供しています。ベクトル検索に関するサポートやアドバイスも行っているため、関心のある方は問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。

また、 Google Workspace に関しても、実績に裏付けられた技術力や導入支援実績があります。企業様の状況に合わせた利用方法の提案や運用のサポートなど、企業様に寄り添ったサポートを提供しています。

本記事を参考にして、ベクトル検索の実践を検討してみてはいかがでしょうか?

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