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【入門】データガバナンスとは？必要性や実施手順、成功事例を解説

【入門】データガバナンスとは？必要性や実施手順、成功事例を解説

データガバナンス

公開年月日: 2025.01.29

更新年月日: 2025.01.29

昨今、データ活用の重要性が高まっており、多くの企業が自社のデータを分析し、戦略策定や施策の検討に役立てています。そして、組織全体で効率的にデータ活用を進めるためには、データガバナンスが重要な取り組みの一つになります。本記事では、データガバナンスの実施手順を 5 つのステップに分けてわかりやすく解説します。加えて、データガバナンスの概要やメリット、成功させるためのポイントなどもご紹介していますので、自社でデータ活用を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。

データガバナンスとは？

データガバナンスとは、組織全体でデータの品質や一貫性を確保し、適切なデータ利用を促進するための管理フレームワークを意味する言葉です。データがビジネスにおいて重要な資産として扱われる中、データガバナンスはデータの信頼性を高め、ビジネスプロセスや意思決定を支援するために欠かせない要素となっています。

具体的には、データの収集や保管、利用などに関するポリシーや手順を定め、データの透明性とアクセス制御を保証することがデータガバナンスの主な目的です。これにより、組織はデータに基づいた意思決定を行うことができ、コンプライアンスを遵守しながらデータ活用におけるリスクを最小限に抑えることが可能になります。

データマネジメントとの違い

データガバナンスと混同されやすい言葉として、データマネジメントが挙げられます。データガバナンスとデータマネジメントは似た概念に見えますが、実際には異なる役割を持っています。

データガバナンスは、主に「方針の策定」に焦点を当てており、データに関するルールや責任、意思決定などのフレームワークを設定します。一方、データマネジメントは「運用と実行」を中心とした考え方であり、実際のデータの収集や処理、保存、保護などを管理します。

つまり、データガバナンスが組織全体のデータ戦略を決める上位の管理フレームワークであるのに対して、データマネジメントはそのガイドラインに基づき、日々のデータ処理や管理を行う実践的なアプローチだと言えます。

データガバナンスの必要性

データガバナンスは、企業が持つ膨大なデータを適切に管理し、ビジネスに役立てるために不可欠な取り組みです。特に現代のようなデータ主導型のビジネス環境では、データの正確性や一貫性、セキュリティなどが重要なポイントになりますが、データガバナンスを導入することで、データの品質を維持し、信頼性の高い意思決定を実現できます。

さらに、データを組織全体で適切に活用することで、生産性の向上や新たなビジネスチャンスの発見に繋がります。また、個人情報や機密データの管理が不十分な場合、自社が法的リスクに晒されてしまう可能性がありますが、データガバナンスを実践すれば、法規制の遵守やプライバシー保護にも大きく寄与します。

このように、データガバナンスは単なる管理手法ではなく、企業が持つデータを最大限に活用し、自社の競合優位性を確立するための重要な取り組みだと言えるでしょう。

データガバナンスのメリット

企業がデータガバナンスを実践することで、具体的にどのような恩恵を受けられるのでしょうか？本章では、データガバナンスの代表的なメリットを 3 つご紹介します。

データ品質の向上

データガバナンスの導入により、企業が保有するデータの正確性や一貫性を確保することができます。仮に重複データや不正確なデータが混在している場合、ビジネスの意思決定が誤った方向に進むリスクがあります。その点、データガバナンスのルールに従いデータを管理すれば、データを常に最新かつ正確な状態に維持することができ、分析やレポートの信頼性も大幅に向上します。

コンプライアンスの遵守

データガバナンスは、企業が法規制や業界の基準に従ってデータを取り扱うための重要な仕組みの一つです。例えば、個人情報保護法や GDPR （ General Data Protection Regulation ： EU 一般データ保護規則）など、データに関する規制が厳しくなっている現代では、適切なデータ管理が必要不可欠です。

その点、データガバナンスを実践することで、機密データの情報漏洩リスクを最小限に抑えることができ、コンプライアンスの遵守に繋がります。

データドリブンな意思決定の実現

データガバナンスの仕組みを構築することで、企業は信頼性の高いデータをもとに迅速かつ的確な意思決定を行えるようになります。データガバナンスでは、自社が保有する膨大なデータを統制・管理するため、各部門における一貫したデータ共有が可能になり、組織全体で効率的なデータ活用を実現できます。これにより、ビジネスにおけるパフォーマンスの最大化やデータドリブンな意思決定の実現に繋がります。

データガバナンスの実施手順を 5 ステップで解説

データガバナンスを効率的に行うためには、適切な手順に沿ってプロジェクトを進める必要があります。本章では、データガバナンスの実施手順を 5 つのステップに分けてわかりやすく解説します。

Step.1 目的の明確化

データガバナンスにおける最初のステップは、何のためにデータを管理するのか、その目的を明確化することです。企業・組織ごとにデータの重要性や利用方法は異なるため、データガバナンスをどのような目的で導入するのかを定める必要があります。

例えば、

データの品質向上
法規制の遵守
データドリブンな意思決定

など、データガバナンスによって実現したい具体的な目的を設定しましょう。

データガバナンスの目的が不明瞭な場合、思うような効果が出ない可能性もあるため、目的の明確化はとても重要なステップだと言えます。

Step.2 ガイドラインの策定

データガバナンスの目的を明確化したら、次はデータの管理方法や取り扱いルールなどを明文化したガイドラインを策定します。データガバナンスで組織全体の統制を図るためには、このガイドラインを整備することが重要なポイントになります。

ガイドラインの内容としては、

データを誰が取り扱うのか
データをどのように扱うのか
データの品質・整合性をどのように担保するのか

などの具体的な基準を定めます。

これにより、データ利用に関する統一された方針が全社的に共有され、組織内の混乱を防ぐことができます。

Step.3 セキュリティ要件の設計

ガイドラインを策定した後は、セキュリティ要件の設計を行います。データガバナンスにおいてはデータの保護が必要不可欠であり、特に個人情報や機密データを扱う場合、セキュリティの強化が重要なポイントになります。

セキュリティ強化の具体例としては、アクセス権の設定やデータの暗号化などが挙げられます。外部からのサイバー攻撃はもちろん、内部不正を防ぐためのセキュリティ対策も忘れずに行い、あらゆる観点からデータの安全性を確保しましょう。

Step.4 組織体制の構築

データガバナンスは属人的な取り組みではなく、組織全体で推進すべき大規模なプロジェクトです。そのため、データガバナンスを円滑に進めるためには、専任の組織体制を構築することが大切です。

例えば、データガバナンスを監督・管理する役割を持つチームを編成し、担当者や責任者を明確にすることで、各部門がデータガバナンスのガイドラインに従って行動できるようになります。このように、組織全体の取り組みとしてデータガバナンスを全社的に浸透させることが、プロジェクトを成功させるための鍵になります。

Step.5 データの監視・運用

最後に、データガバナンスの取り組みを実際に運用し、継続的に監視するための仕組みを構築します。この時、データが適切に管理され、ガイドラインに従って運用されているかをチェックすることが大切です。

このように、データの利用状況や品質を常にモニタリングすることで、データガバナンスが機能しているか否かを適切に評価できるようになります。そして、その結果を踏まえながら運用改善を重ねることで、データガバナンスの導入効果を最大化できます。

データガバナンスを成功させるためのポイント

データガバナンスを円滑に進めるためには、いくつか意識すべき点が存在します。本章では、データガバナンスを成功させるためのポイントを 3 つご紹介します。

組織全体で取り組む

データガバナンスを成功させるためには、 IT 部門や特定の部署だけが関与するのではなく、組織全体で取り組むことが必要不可欠です。各部門がデータを共有し、お互いに協力して一貫性のあるデータ管理体制を築くことで、データガバナンスが効果的に機能するようになります。

このように、全社員がデータガバナンスの重要性を理解し、共通の目標に向かってアクションを進めることで、統一化されたデータ管理を実現できます。

スモールスタートで始める

いきなりデータガバナンスを本格導入するのが難しい場合は、スモールスタートで始めることも有効な選択肢になります。例えば、特定のプロジェクトやデータセットに対してデータガバナンスの仕組みを導入し、成功体験を積み重ねることで、徐々に範囲を広げていくことができます。

このように、小規模なプロジェクトからデータガバナンスをスタートすれば、現場のフィードバックを運用に反映しながら柔軟に改善を進められるため、失敗のリスクを最小限に抑えることが可能になります。

PDCA サイクルを回す

データガバナンスは一度実行して終わり、ではなく、継続的な改善が求められる取り組みです。そして、ここで有効になるのが PDCA サイクルを継続的に回すことです。

具体的には、

Plan（計画）
Do（実行）
Check（評価）
Act（改善）

のサイクルを繰り返し実行することで、データガバナンスの品質を維持し、より効果的な運用を実現できます。特にデータの利用状況や外部環境の変化に応じて、柔軟に対応できる体制を構築することが、データガバナンスの成功を長期的に支える要素となります。

データガバナンスの成功事例

最後に、データガバナンスの成功事例をご紹介します。

某 IT 企業では、自社の社員向けに様々なデータを組織内で共有するためのプラットフォームを整備していました。例えば、顧客の属性データや Web の行動履歴など、主にマーケティング領域で利用する各種データがプラットフォーム内に保管されていました。

同プラットフォームに格納されているデータは誰でも閲覧できましたが、同時に誰でもデータのアップロードや削除が可能な仕組みとなっていたため、次第にプラットフォームを適切に管理・運用することが困難になりました。また、格納しているデータ量は非常に膨大であり、これらを一元的に統制するためのルールが存在しないことも大きな課題の一つでした。

そこで、同社はデータガバナンスを導入し、プラットフォーム内のデータを適切に管理・運用するための仕組みを構築しました。具体的には、所属部署や役職に応じてプラットフォームのアクセス権限を分けて設定し、一般社員によるデータのアップロードや削除を制限したのです。

また、プラットフォームの利用ルールを明文化してガイドラインを作り、全社員がこのガイドラインに従ってプラットフォームを利用するよう、社員向けの勉強会を開催しました。これにより、全社員が共通認識を持ってプラットフォームを利用できるようになり、結果としてデータ品質の維持に繋がりました。

このように、データガバナンスを実践したことで、自社が保有するデータの品質を担保し、組織全体の生産性向上を実現した好事例となっています。