生成 AI の 7 つのデメリットとは?具体的な失敗事例や失敗を回避するためのポイントを徹底解説!
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昨今、生成 AI が大きな注目を集めており、様々な企業が生成 AI を活用して自社の業務効率化や生産性向上を実現しています。生成 AI はとても便利なツールですが、一方でいくつかのデメリットが存在することをご存知でしょうか?
本記事では、生成 AI の代表的なデメリットを 7 つご紹介します。具体的な失敗事例や活用時のポイントなども解説していますので、ぜひ最後までご覧ください。
生成 AI とは?
まずは、生成 AI の基礎知識について解説します。
生成 AI とは、コンピュータープログラムが自らデータや情報を生み出す能力を持つ、次世代の AI を意味する言葉です。従来の AI では、主に学習済みデータから適切な回答を見つけることに重点を置いていましたが、生成 AI は新しいデータやコンテンツを作り出すことが可能であり、ゼロから一を生み出す能力が大きな特徴です。
一般的な生成 AI は、広範なトレーニングデータに基づいて反復学習を行うことで、新しいデータやコンテンツを生成できるように設計されています。画像生成 AI を例に取れば、 AI に対して「犬」や「猫」などの画像を大量にインプットすることで、 AI は犬や猫がどのような特徴を持っているのかを学習します。その結果、 AI に犬や猫の画像生成を指示すると、犬や猫の特徴を捉えた精緻な画像をアウトプットとして返してくれるようになります。
また、有名な生成 AI としては、 OpenAI 社の ChatGPT が挙げられますが、これはテキストデータをもとに新しい文章を自動的に生成できるものです。ただし、 ChatGPT の最新モデル( 2024 年 9 月現在)である GPT-4o (正式名称: GPT-4 omni )は、マルチモーダルモデルとして提供されているため、この点は覚えておきましょう。
なお、マルチモーダルとは、テキストや音声、画像など、複数の異なるソースから情報を収集し、統合して処理する仕組みのことであり、 Google が 2023 年 12 月に発表した生成 AI モデル「 Gemini 」も、このマルチモーダルに対応しています。
このように、テキストだけではなく、画像や動画を自動生成できる AI も存在し、マーケティング活動におけるコンテンツ作成やテレビ CM など、あらゆるシーンで活用されています。企業が業務効率化や生産性向上を実現し、自社のビジネス成長に繋げるためには、生成 AI が有力なツールになると言えるでしょう。
生成 AI やマルチモーダル AI の基礎に関しては以下の記事が参考になります。
関連記事:生成 AI を理解する 14 の基礎用語:初心者のための入門ガイド
関連記事:「マルチモーダル AI とは?仕組みやメリット、活用事例などを一挙にご紹介!」
生成 AI の 7 つのデメリット
本章では、生成 AI の代表的なデメリットを 7 つご説明します。生成 AI の活用に失敗しないよう、具体的な内容を理解しておきましょう。
導入コストが発生する
生成 AI を導入するためには、一定のコストが発生することが一般的です。生成 AI の中には、無料で使えるツールも存在しますが、セキュリティやサポートなどの観点から、ビジネスシーンで利用する場合は有償のサービスがおすすめです。
この時、ツールの導入効果を最大化するためには、複数のサービスを比較検討し、自社の状況に合わせたツールを選択することが大切です。生成 AI の導入によるメリットは大きいため、導入コストを必要経費として捉え、前向きに検討を進めましょう。
倫理的・社会的なリスクを伴う
生成 AI の活用には、倫理的・社会的なリスクが伴います。例えば、 AI が偏見を含むデータを学習した場合、その偏見を含んだコンテンツが生成されてしまう可能性があります。
また、生成されたコンテンツが人々に誤解や混乱を招き、最悪の場合は重大なトラブルや企業の信頼性失墜に繋がるリスクもあります。これを回避するためには、生成 AI 利用に関するポリシーやルールを整備するなど、組織全体で生成 AI を適正に活用するための仕組みを整えることが大切です。
データセキュリティ・プライバシーのリスクを伴う
生成 AI を活用する際には、取り扱うデータの安全性とプライバシー保護が重要な問題の一つになります。例えば、大量の個人情報や機密データを AI の学習に利用する場合、それらの情報が不正にアクセスされたり、外部に漏洩したりするリスクがあります。
また、生成 AI が誤ったデータを出力することで、意図せず機密情報が公開されるリスクも考えられるため、データの管理とセキュリティ対策は忘れずに行うようにしましょう。なお、企業向けに提供されている生成 AI サービスの多くはセキュリティ面が強化されており、安全な環境で生成 AI を活用できるため、生成 AI の導入時は慎重にサービスを選ぶことが重要なポイントになります。
法的責任や規制への対応が難しい
生成 AI の利用においては、法的責任や規制に関する問題も無視できません。なぜなら、 AI が生成したコンテンツに関する著作権や責任の所在が不明確な場合、法的なトラブルに発展する可能性があるためです。
ただし、各国や地域ごとに異なる規制が存在しているため、それらに漏れなく準拠することは非常に困難です。このように、グローバルな展開には法的なリスクが伴うため、自社の法務部門や外部の専門家と密に連携しながら生成 AI を活用することが、法的トラブルを回避するための有効な選択肢になります。
AI の中身がブラックボックス化する
生成 AI のデメリットの一つとして、 AI の中身がブラックボックス化することが挙げられます。これは、 AI が判断・生成を行うためのプロセスが複雑化し、開発者やユーザーにとって理解が困難である状態を意味しています。
そして、 AI が特定のアウトプットを返した理由を説明できない場合、その信頼性や透明性が問題視されることもあります。特に医療や法律など、専門性や正確性が求められる分野においては、 AI のブラックボックス化が原因で誤解やトラブルが生じるリスクが高まります。
このようなブラックボックス化を回避するためには、生成 AI のプロンプト集や運用マニュアルなどを整備し、組織全体で適切な AI 利用を促進する必要があります。これにより、 AI の精度を一定に保つことができ、利用者の意図に沿った回答を得られるようになります。
生成 AI を開発するための人材確保が難しい
高精度な生成 AI を開発するためには、高度な専門知識を持つ IT 人材が求められます。しかし、日本では慢性的な IT 人材不足が続いており、優秀な人材を確保することは容易ではありません。
そのため、生成 AI の開発を検討する際には、中途採用を積極的に行うだけではなく、自社の社員に対して教育を施し、 IT 人材化することも視野に入れましょう。なお、自社だけで教育・研修を進めるのが難しい場合は、外部の専門家に依頼することも有効な選択肢になります。
当社 G-gen でも、生成 AI の活用支援をプログラムとして提供しています。例えば、 Google の最新の生成 AI の活用支援を行っているほか、 PoC から本番レベルの実装まで可能なため、関心のある方は問い合わせフォームよりお気軽にご連絡ください。
AI ハルシネーションのリスクがある
AI が誤った情報を生成する AI ハルシネーションも、生成 AI 活用におけるデメリットの一つです。 AI が生成するアウトプットの精度はデータの品質・信頼性に依存するため、信頼できる情報をもとに AI モデルを学習させることが技術的信頼性や説明可能性の担保に繋がります。
AI ハルシネーションに関しては以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:AI 活用の落とし穴? AI ハルシネーションの原因・対策をわかりやすく解説!
ここまで、生成 AI の 7 つのデメリットをご紹介しました。生成 AI はとても便利なツールである一方で、倫理的・社会的リスクや人材確保の課題など、注意すべきポイントも多数存在します。
そのため、生成 AI を活用する際には、導入目的や用途を明確にして導入効果を最大化しつつ、デメリットを理解して各種リスクを回避するための仕組みやルールなどを整備することが大切です。このように、生成 AI との正しい付き合い方を実践すれば、生成 AI は自社の生産性向上やビジネス成長を推進するための強力なツールになるでしょう。
生成 AI 活用の失敗事例
ここまで、生成 AI のデメリットについて解説してきましたが、実際にどのような失敗が起きているのでしょうか?本章では、生成 AI 活用の失敗事例を 3 つご紹介します。
サムスン電子(ソースコードの外部流出)
韓国のサムスン電子では、生成 AI の利用に伴い、ソースコードが外部流出してしまいました。このインシデントは、社員が生成 AI にコード情報を取り込んだところ、サーバーに存在するデータが、外部ユーザーに誤って共有されてしまったことが原因だと言われています。
この外部流出を受けて、同社は生成 AI の利用に関する新たなポリシーを策定しました。例えば、社内デバイスでの生成 AI ツールの利用は禁止とすることに加えて、個人デバイスで生成 AI を使う場合には、入力データに一定の制限(会社に関する情報はアップロードしない)を設けるなど、情報漏洩の再発防止に向けた取り組みを行っています。
マクニカネットワークスカンパニー( AI の品質問題)
マクニカグループのテクノロジープロバイダであるマクニカネットワークスカンパニーは、社員のナレッジ向上や業務効率化を目的とした生成 AI チャットボットの開発に乗り出しました。しかし、チャットボットの運用が始まると、日本語の質問に対して英語で回答されるなど、 AI の品質に問題があることが発覚したのです。
原因を調査したところ、各コンポーネントの精度・動作を確認する仕組みがなかったり、チャットボットの対象となるユーザー業務の詳細が定義されていなかったりするなど、様々な問題があることがわかりました。そこで、同社は RAG ( Retrieval - Augmented Generation )の仕組みを見直し、検索と生成をそれぞれ切り分けて考えることで、従来よりも高精度な回答を得られるようになりました。
なお、 RAG とは生成 AI の品質・性能を向上させるための仕組みであり、主に自然言語処理の分野で注目を集めています。 AI が独自に情報を生成するのではなく、関連情報をデータベースや Web サイトから検索して回答を作るため、より正確性の高い回答を得ることができます。
RAG に関しては以下の記事で詳しく解説しています。
OpenAI(権利関係に関する訴訟)
生成 AI をビジネスシーンで利用する場合、権利関係の訴訟に発展するケースも珍しくありません。 2023 年 8 月、ジョージ・ R ・ R ・マーティンやジョン・グリシャムをはじめとした 10 人以上の作家が「 ChatCPT が許可なく著作物のデータを利用している」として、 OpenAI に対して訴訟を起こしました。
また、同年 12 月には、ニューヨークタイムズが「ニューヨークタイムズ紙の記事を無断利用し、購読料収入や広告収入の機会を奪っている」として、 OpenAI と Microsoft に数十億ドルの損害賠償を求めています。このように、場合によっては訴訟に発展してしまうこともあるため、生成 AI を活用する際には、著作権侵害などの権利関係には十分に注意しましょう。
生成 AI 活用の失敗を回避するためのポイント
生成 AI の活用する際には、いくつか意識すべきポイントが存在します。最後に、生成 AI の活用を成功させるためのポイントについてご紹介します。
AI の活用目的を明確化する
生成 AI を導入する際、最初に行うべきことは AI の活用目的の明確化です。何を達成したいのか、どの業務プロセスで AI を活用するのかなど、具体的な目的や用途を明確にしましょう。
目的が曖昧なまま AI を活用した場合、 AI の性能を十分に発揮することはできず、コストが無駄になってしまうリスクがあります。そのため、まずは AI の活用目的を明確化し、具体的かつ測定可能な目標を設定することが重要なポイントになります。
万全なセキュリティ対策を講じる
生成 AI が扱うデータは企業の財産であり、万全なセキュリティ対策は必須事項になります。なぜなら、 AI が処理するデータには機密情報や個人情報が含まれることが多いため、データ漏洩や不正アクセスを防ぐための強固なセキュリティ対策が求められるのです。また、 AI 自体がサイバー攻撃の対象となる可能性もあることから、継続的なセキュリティの見直しとアップデートを行うことも大切です。
権利関係を侵害しないように注意する
生成 AI が作成したコンテンツにおいては、著作権や商標権などの権利関係に注意を払うことが重要です。特に、 AI が他の作品やデータを参考にしてコンテンツを生成する場合、完成したアウトプットが他者の権利を侵害していないかを確認する必要があります。この時、法律に詳しい専門家の助言を得ることで、リスクを最小限に抑えられるでしょう。
社員教育やスキルアップ研修などを実施する
生成 AI を効果的に活用するためには、社員が AI の仕組みや操作方法を理解していることが求められます。そのため、社員教育やスキルアップ研修などを実施し、 AI の基本的な知識から実践的なスキルまでを習得させることが大切です。 AI に精通した人材が社内にいれば、生成 AI のポテンシャルを最大限に引き出すことができ、自社の競争力向上に繋がります。
学習データの品質をチェックする
生成 AI の精度や信頼性は、学習データの品質に大きく依存します。仮に、学習データに偏りや誤りがある場合、 AI の出力結果もそれに影響されてしまうため、生成 AI を活用する際は学習データの品質管理が重要なポイントになります。 AI が正確かつ有用なコンテンツを生成できるように、データの選別やクリーニングなどを実施し、 AI が適切に学習できる環境を整備しましょう。
プロンプトの内容を工夫する
生成 AI に指示を与える際の「プロンプト」の内容は、 AI の生成結果に大きな影響を与える重要な要素の一つです。具体的で明確なプロンプトを設定することで、より精度の高い出力を得られるようになります。
プロンプトの作成は試行錯誤が必要ですが、工夫次第で AI のパフォーマンスは飛躍的に向上するため、しっかりと時間をかけて練り上げることが成功の鍵となります。なお、 AI を効率的に活用するための技術・学問分野として、プロンプトエンジニアリングという言葉も存在するため、参考までに覚えておきましょう。
プロンプトエンジニアリングについては以下の記事で詳しく解説しています。
関連記事:プロンプトエンジニアリングとは?基礎から応用まで重要なポイントを一挙に紹介!
まとめ
本記事では、生成 AI の代表的なデメリットを 7 つご紹介しました。
生成 AI はとても便利なツールですが、一方でいくつかのデメリットが存在します。どのような点に注意して活用すればよいのか、重要なポイントを理解しておきましょう。
また、生成 AI を活用するうえでは Google Cloud が有効な武器の一つになります。 Google Cloud は Google 社が提供するパブリッククラウドサービスであり、自社の業務効率化や生産性向上を実現するための生成 AI 関連サービスが多く搭載されています。
例えば、自然言語処理は Dialogflow などの Conversation AI サービス、画像処理は Imagen など、様々な生成 AI サービスが用意されている点が Google Cloud の大きな特徴です。さらに、 Vertex AI を使えば AI モデルを自由にカスタマイズできるため、自社の状況に合わせて柔軟な AI 活用を実現できます。
G-genは、Google Cloud のプレミアパートナーとして Google Cloud / Google Workspace の請求代行、システム構築から運用、生成 AI の導入に至るまで、企業のより良いクラウド活用に向けて伴走支援いたします。
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