データライフサイクル管理とは?目的や進め方などをわかりやすく解説!
- データ利活用

昨今、データ活用の重要性が強く叫ばれており、企業は自社が保有するデータを分析し、アクション検討や意思決定に役立てることが求められています。そして、データを効率的に活用するためには、データライフサイクル管理が重要なポイントになります。
本記事では、データライフサイクル管理とは何かという基礎知識に加えて、目的や進め方などをわかりやすく解説します。自社でデータ活用を検討されている方は、ぜひ最後までご覧ください。
データライフサイクル管理とは?
まずは、データライフサイクル管理の基礎知識をご説明します。混同しやすい言葉との違いにも触れていますので、確実に内容を理解しておきましょう。
データライフサイクルの概念
データライフサイクル管理とは、データが生成されてから最終的に廃棄されるまでの一連のプロセスを一元的に管理することです。なお、データライフサイクル管理の英訳は Data Lifecycle Management であり、これを略して DLM と呼ばれることもあります。
昨今、企業が保有するデータ量は増加し、その種類も多様化しています。そのため、効率的なデータ活用を行うためには、膨大なデータを適切に管理する必要があります。
また、個人情報をはじめとした機密データが外部漏洩した場合、取り返しのつかない事態に発展する可能性がありますが、データライフサイクル管理はデータの廃棄プロセスも管理対象としているため、情報事故などのインシデント回避にも繋がります。
このように、データライフサイクル管理は現代のデータ駆動型のビジネスにおいて、データの価値を最大限に引き出し、リスクを最小限に抑えることができる重要な取り組みです。データを安全かつ効率的に活用するためには、適切なデータライフサイクル管理が必要不可欠だと言えるでしょう。
データガバナンスとの関係性
データガバナンスとは、データの品質やセキュリティ、プライバシー、アクセス管理、コンプライアンスなど、データに関する方針やルールを策定し、それらを組織全体で徹底するための管理体制を意味します。
データガバナンスはデータの品質や信頼性を確保し、データを適切に利用するための環境・仕組みを整備することが主な目的ですが、データライフサイクル管理はデータの技術的な運用プロセスに着目している点が大きな特徴です。
そのため、自社のデータを安全かつ効率的に活用するためには、データガバナンスとデータライフサイクル管理の 2 つの側面から検討を進めることが大切です。このように、両者は相互補完的な関係性となっていることを覚えておきましょう。
情報ライフサイクル管理( ILM )との違い
情報ライフサイクル管理( ILM : Information Lifecycle Management )とは、データが意味を持つ情報に変換された後、その情報が組織内でどのように利用され、保存されるのかを管理するためのプロセスを意味します。
情報ライフサイクル管理は、データが情報として価値を持った後の管理に焦点を当てており、ビジネスにおける利用・保存を重視した考え方です。そのため、データライフサイクル管理が「データの取扱説明書」だとすれば、情報ライフサイクル管理は「情報の活用ガイド」だと言えるでしょう。
これらを適切に組み合わせることで、企業はデータと情報を最大限に活用でき、ビジネスにおける競合優位性に繋がります。
データライフサイクル管理の目的
本章では、データライフサイクル管理の主な目的を 3 つご紹介します。どのような目的で実践されているのか、具体的な内容を理解しておきましょう。
データ活用の効率化
データライフサイクル管理の主な目的として、データ活用の効率化が挙げられます。データライフサイクル管理を行うことで、データの収集や整理、保存などを効率化できるため、データを適切な場所に適切な形式で保管できます。これにより、データを分析作業やレポート作成などに有効活用でき、結果としてデータに基づいた迅速な意思決定に繋がります。
データの品質向上
データライフサイクル管理は、データの品質向上にも大きく寄与します。例えば、データの入力段階から精度を高め、データの重複やエラーを防ぐことはもちろん、定期的なデータクレンジングや整合性チェックを実施することで、データ品質の維持を実現できます。データを分析・活用するうえでは、データの品質・信頼性が重要な要素になるため、この観点からもデータライフサイクル管理は欠かせない取り組みであると言えるでしょう。
コンプライアンス・セキュリティの遵守
コンプライアンスやセキュリティの遵守についても、データライフサイクル管理の重要な目的の一つです。企業が取り扱うデータには、個人情報や機密情報が含まれることが多く、これらのデータを適切に保護することは法的義務として定められています。その点、データライフサイクル管理は、データがどのように収集され、どのように保存されるのかを厳密に管理し、アクセス権限の制御なども行うため、セキュリティリスクを最小限に抑えながら自社のデータを有効活用できます。
データライフサイクル管理の基本ステージと詳細
データライフサイクル管理には、いくつかのステージが存在します。本章では、データライフサイクル管理の基本ステージと各ステージの詳細をわかりやすくご説明します。
データ作成
データライフサイクルの最初のステージはデータ作成です。具体例としては、顧客情報の入力やアプリケーションのログ生成などが挙げられます。この時、データが正確かつ一貫性を持って生成されることが重要なポイントであり、これによって後のステージへ円滑に進むことができます。
データ収集と保存
データが作成された後は、それらを収集・保存するのが次のステージになります。データ収集とは、複数のデータソースから必要なデータを取りまとめるプロセスのことであり、これによってデータを分析・利用するための基盤を形成します。
また、データ保存では、収集されたデータが安全かつ効率的に保管されるように管理します。この時、構造化データ(事前に定義されたフォーマットに整理されたデータ)の場合はリレーショナルデータベースで保存、半構造化データや非構造化データ(特定の形式で整理されていない多様なデータ)であれば NoSQL データベースで保存するなど、データ特性に応じて適切な保管方法を選択することが大切です。
なお、リレーショナルデータベースとは、データを表(テーブル)形式で管理するデータベースの一種であり、複雑なクエリを実行してデータの抽出・結合を効率的に行うことができます。一方、 NoSQL データベースは固定されたテーブル構造を持たないデータベースであり、柔軟なスケーラビリティや高速なデータアクセスが求められるようなシーンで効果を発揮します。
データの前処理とクレンジング
データを保存したら、次にデータの前処理とクレンジングを実施します。データ前処理では、データの形式を統一して分析作業に使いやすい形に整え、データクレンジングでは、欠損値の補完や異常値の除去、重複データの削除などを行います。
データクレンジングの具体例としては、「(株)」という表記を「株式会社」に直すようなケースなどが該当します。このようなクレンジング作業を実施することで、データの品質・信頼性の向上に繋がります。
データ分析と可視化や共有
データの前処理・クレンジングが完了すると、次はデータの分析や可視化、共有を実施するステージに進みます。このステージでは、前処理されたデータをもとに分析を行い、有益なインサイト(洞察)を抽出します。
さらに、分析結果を人間が理解しやすい形に可視化することで、情報としての価値をより高めます。そして、得られた情報は関係者へ共有され、ビジネスの改善や戦略立案などに役立てられます。
データのアーカイブ
データが利用され、その役割を終えた後はデータのアーカイブを実施します。なお、アーカイブとは、長期的に保存する必要があるデータを現行の業務システムから移行し、別の安全な場所に保管することを意味します。これにより、システムの負荷を軽減しつつ、必要な時にいつでも情報へアクセスできる状態を保持できます。
データ廃棄
データライフサイクルの最終ステージはデータの廃棄です。データ廃棄とは、不要になったデータを安全に削除することを意味しており、ストレージからのデータ削除やデジタルデータ自体の破壊などが該当します。適切なデータ廃棄は、情報漏洩の回避やコンプライアンス維持のために必要不可欠であるため、自社でデータ活用を行う際には必ず意識しておきましょう。
データライフサイクル管理の進め方
データライフサイクル管理を実践する際には、適切な手順でプロセスを進めていく必要があります。本章では、データライフサイクル管理の具体的な進め方について解説します。
データの分類と重要度評価
データライフサイクル管理の最初のステップは、データの分類と重要度評価です。企業が扱うデータは多岐にわたりますが、それぞれのデータが持つ価値やリスクは大きく異なります。
そのため、各データを業務内容やビジネスニーズに応じて分類し、各データの重要度を評価することが重要なポイントになります。そして、重要度評価に基づいて適切な処理方法や保護方針などを策定することで、適切なデータライフサイクル管理を実現できます。
データ保持ポリシーの策定
データ保持ポリシーとは、各データの種類や重要度に応じて、データの保持期間などを定めるためのポリシーです。例えば、法的な要件やビジネスニーズに基づいて、顧客データは何年間保存するのか、古いデータはいつ削除するのかなどを明確化します。このデータ保持ポリシーを適切に策定することで、データの無駄な蓄積を防ぐとともに、ストレージコストの最適化に繋がります。
メタデータ管理の確立
自社のデータを適切に管理するためには、メタデータ管理が必要不可欠です。メタデータとは、データの中身を説明するためのデータ(情報)を意味しており、データの作成日や作成者、データ形式などが該当します。メタデータを管理することで、データの検索やアクセス、整理などを容易に行えるようになり、データの管理プロセス全体を効率化できます。
セキュリティ対策の実装
データライフサイクルのあらゆる段階でセキュリティを確保するためには、強固なセキュリティ対策を実装する必要があります。このプロセスでは、データのアクセス制御や暗号化、監査ログの設定など、データを保護するための具体的な対策を講じます。
また、セキュリティインシデントが発生した際の対応計画もあわせて策定しておくことが大切です。これにより、データの不正アクセスや情報漏洩のリスクを最小限に抑え、コンプライアンスを確実に遵守することができます。
アーカイブと廃棄プロセスの設計
最後に、データのアーカイブと廃棄プロセスを設計します。データのアーカイブでは、不要になったデータを安全に移すための場所を用意し、必要な場合に迅速にアクセスできるような環境を整備します。
そして、不要になったデータを完全に削除するためのプロセスについても、細かく設計しておくとよいでしょう。このように、適切なアーカイブと廃棄プロセスの手順を設計することで、不要なデータの蓄積を回避することができ、セキュリティリスクの低減に繋がります。
データライフサイクル管理に役立つツール
効率的なデータライフサイクル管理を実現するためには、様々な IT ツールを駆使する必要があります。最後に、データライフサイクル管理に役立つ代表的なツールをいくつかご紹介します。
ETL ツール
ETL とは、
- Extract (抽出)
- Transform (変換)
- Load (書き出し)
の 3 つの英単語の頭文字を取った言葉です。
ETL ツールはデータライフサイクル管理において有効に活用できるツールであり、異なる形式のデータを統一し、分析可能な形に整形できます。また、データの前処理やクレンジングにも役立つため、データの信頼性を高めることが可能になります。
データウェアハウス( DWH )
データウェアハウス( DWH )とは、組織全体のデータを一元的に管理・保存するためのシステムであり、大量のデータを長期間にわたって効率的に保管し、それらを迅速に検索・分析できます。これにより、データの一貫性を確保し、重要なインサイト(洞察)を抽出できるため、データウェアハウス( DWH )はデータライフサイクル管理においてデータの保存と管理における中心的な役割を担うと言えるでしょう。
BI ツール
BI ツールとは、 Business Intelligence tools (ビジネスインテリジェンスツール)の略であり、データを人間が理解しやすい形に分析・可視化するためのツールです。データライフサイクル管理において、 BI ツールはデータの価値を最大限に引き出す役割を果たしており、経営層や現場の担当者がデータに基づいた意思決定を迅速に行うことが可能になります。
ストレージサービス
ストレージサービスとは、データを安全に保存しておくためのツールです。単にデータを保管するだけではなく、適切なアクセス管理を行うための基盤としても役立ちます。特に、クラウド型で提供されているストレージサービスは、急なデータの増減にも柔軟に対応できるため、データライフサイクル管理のアーカイブ作業などを行う際に有効的に活用できます。
ツール選定のポイントと比較
前項でご紹介した通り、データライフサイクル管理に役立つツールは多岐にわたるため、まずは自社がツールを導入する目的を明確化し、状況に合わせたツール選定を行うことが大切です。また、同じ種類のツールだとしても、市場には様々なサービスが存在しているため、それらを比較検討して自社に最適なものを選択する必要があります。
サービスを比較する際のポイントとしては、
- 価格
- 機能
- 使いやすさ(ユーザーインターフェース)
- セキュリティ(安全性)
- サポート体制(問い合わせ対応など)
などが挙げられます。
せっかくツールを導入しても、有効活用できなければコストが無駄になってしまいます。前述した複数の要素を意識しながら、自社の状況に合わせたツール選定を行うように心がけましょう。
当社 G-gen では、あなたの会社の状況をヒヤリングをさせていただき、適切なツールのご提案からデータライフサイクル管理のプロセスや基盤の構築など一気通貫でのサポートが可能です。もちろん、データの収集プロセスだけ、データの分析プロセスだけのご相談もお気軽にしてください。
まとめ
本記事では、データライフサイクル管理とは何かという基礎知識に加えて、目的や進め方などをわかりやすく解説しました。
企業がデータライフサイクル管理を実践することで、データの品質向上やコンプライアンス・セキュリティの遵守など、様々なメリットを享受できます。この記事を読み返して、データライフサイクル管理の基本ステージや具体的な進め方など、重要なポイントを理解しておきましょう。
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本記事を参考にして、データライフサイクル管理を実践してみてはいかがでしょうか?
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