ファンと共に成長する人工知能キャラクター「RD」を Google Cloud で実現

ファンと共に成長する人工知能キャラクター「RD」を Google Cloud で実現

「G-gen は、我々の『私たちで運用や改善を回していきたい』という意図を汲み、Terraform によるクラウドインフラのコード化や GitHub Actions による CI/CD 環境を整備してくださいました。その結果、機能改善のサイクルを私たち自身で素早く回せるようになりました」
株式会社講談社 IT戦略企画室 デジタルソリューション部 大竹 孝樹 氏

児童文学の人気作品『怪盗クイーン』シリーズ(はやみねかおる、講談社青い鳥文庫)に登場する人工知能キャラクター「RD」を、ファンとの対話を通じて共に育てていく、新体験を実現しました。Google Cloud を基盤としたインフラ構築のパートナーとしてG-gen を選んだ経緯と、プロジェクトの成果について、IT戦略企画室 デジタルソリューション部 副部長の小笠原 傑氏と、同部AI エンジニアの、塙 一晃氏、大竹 孝樹氏にお話を伺いました。

株式会社講談社様

株式会社講談社様

1909年創業の株式会社講談社。「おもしろくて、ためになる」を合い言葉に、コミック、雑誌、文芸書など幅広い出版物を展開する総合出版社です。近年はウェブメディアやコミックアプリの運用、IP(知的財産)を用いたライセンス事業やデジタルメディア運営に注力するなど、新しい時代に即した出版活動にも取り組み続けています。IT 活用に関する取り組みを KODANSHA IT Inside で発信中。

  • この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

デジタルを活用した新しい BtoC 向けサービス開発を目指して

講談社のIT戦略企画室 デジタルソリューション部は、社内のデータ活用促進をミッションの一つとして掲げています。同部副部長の小笠原氏は、部署の抱える課題感と方針についてこう語ります。

「出版社は顧客との最終接点が書店になるため、顧客のデータを自社で保有していないという課題があります。しかしデジタル化が進む中でコミックアプリをはじめとする toC 向けのサービスが成長し、データをより積極的に分析やマーケティングに使うべきなのではという問題意識が生まれ、我々のチームが立ち上がりました。現在は主にデータを活用した社内の DX 推進、プロダクト開発、 ID 事業の推進、プロモーションのサポートなどを担当しています」

今回のプロジェクトも、そういったデジタル技術やデータを使った BtoC 向けのサービス開発という文脈から生まれました。児童部門と連携し、ファンクラブ会員向けの新しい体験を提供するため、世界最高の人工知能であるキャラクターのチャットボットの開発に着手しました。

東北大学との連携から生まれた「RD 育成プロジェクト」

企画の発端は、2023年頃にさかのぼります。BtoC 向けプロダクト開発の可能性を模索していた同部の塙氏は、東北大学言語AI研究センターの赤間怜奈助教とのディスカッションをきっかけに、このプロジェクトを着想しました。

赤い夢学園サイト内 倉木研究所(RDチャット参加ページ):https://cocreco.kodansha.co.jp/akaiyume/laboratory

「出身元である東北大学の研究室と、何か事業連携が検討できないかという話をしていた時に、赤間先生がちょうど『怪盗クイーン』シリーズの大ファンだという話が出てきました。作品に登場する RD は人工知能のキャラクターなので、技術を活用し再現できるのではないかと考えました。編集部に企画を持っていったところ、面白いから挑戦してみようという話になりました」と塙氏は振り返ります。

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株式会社講談社 IT戦略企画室 デジタルソリューション部 AI エンジニア 塙 一晃氏

しかし、プロトタイプ開発の段階で大きな壁に直面しました。対話のロジックを改善しても、常に「RD らしい」応答を安定して再現し続けることが難しく、ユーザーごとに「RD らしさ」の解釈が微妙に異なるという課題が浮上したといいます。

「RD のプロトタイプを作って赤間先生に見せたのですが、『これは RD ではない』『ファンは納得しない』と厳しいご意見をいただき、一度は諦めかけました。ただそこで、完成された RD を提供するのではなく、ファンの方々との対話を重ねながら『RD』を一緒に育てていく企画にしてはどうかと軌道修正したのです。そうすると、ファンの方々も『こっちが正解だよね』というフィードバックをどんどん入れてくれる。ファンと共にキャラクターを作り上げるエコシステムへの手応えが見えてきたので、G-gen にシステム構築をお願いすることにしました」(塙氏)

Google Cloud Next で出会った G-gen にプロダクト開発を依頼

G-gen との出会いは、Google Cloud Next Tokyo '23 でした。当時の Google 担当営業から紹介を受けた小笠原氏は、G-gen の技術力に注目したといいます。「イベントで G-gen とお会いして、Google Cloud に非常に精通されているという印象を受けました。その後、セキュリティアセスメントでもお取引をさせていただいたこともあり、安心感を持ってお願いできました」

セキュリティアセスメントでは、Google Cloud 環境における IAM 権限の見直しやログ・モニタリングの適正化など、安全な利用のための基盤整備を実施。この経験が、本格的なプロダクト開発を G-gen に依頼する決め手となりました。

G-gen を選んだ理由について、小笠原氏は「我々のニーズを満たしているうえに、レスポンスも早かった」と評価します。AI エンジニアの大竹氏も「共通言語を持ってスムーズにやり取りでき、手戻りなく短い期間でいろいろなことがわかって、ありがたかったです」と振り返ります。

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株式会社講談社 IT戦略企画室 デジタルソリューション部 AI エンジニア 大竹 孝樹氏

1,000ユーザー同時接続を想定した負荷試験で本番運用に備える

本番リリースに向けて、同社と G-gen は同時接続1,000ユーザーを想定した負荷試験を実施しました。チャットボットという特性上、ユーザーが発話を投げてから返答が返ってくるまでの時間は、発話内容そのものや、発話内容に基づいて分岐する処理内容によって変動します。このため、負荷試験では通常のウェブサイトとは異なる難しさがあったといいます。

「実際のユーザー行動をシミュレーションするために、ユーザーが数ターン会話して、最後にフィードバックを送信して離脱するというシナリオでテストしました。依存している外部 API の制限を含め複数の箇所がボトルネックになっていて、かなり難しかったです」(大竹氏)

G-gen による支援は、負荷試験だけにとどまりません。API の監視でエラーをキャッチして Slack に通知する仕組みや、GitHub Actions を活用した CI/CD の整備など、運用フェーズを見据えた基盤づくりが行われました。

「CI/CD をきちんと整備していただいたのはすごくありがたかった。1回1回手動でデプロイするのは避けたかったので、現状ベストプラクティスだと思われているものをしっかり作っていただいたおかげで、我々がいろいろな機能改善をやりやすくなりました」と大竹氏は語ります。

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構成図

1万対話を超える反響、他 IP への横展開も視野に

2025年9月のリリース以降、サービスは順調に稼働しています。これまでに数万回の対話が行われ、SNS 上でもファンからの好意的な反応が寄せられているそうです。ただし、まだまだ理想の RD 像には遠く、フィードバックやチューニングなど、日々奮闘中です。

また、大竹氏は品質と運用面での成果についてもこう強調します。「リリース後のトラブルもなく、品質の高いシステムが構築できました。必要なエラーだけが Slack に通知されるため、運用の負担も最小限です」

今後の展望について、講談社では今回の成功を足がかりにさらなる展開を見据えています。

「まずは今回の基盤を活用し、他のプロジェクトへの横展開を進めていきたいと考えています。また、社内データの活用という点でも、Google Workspace と連携した業務効率化や、RAG(検索拡張生成)を用いた社内システムの構築など、AI 活用の幅を広げていくつもりです」(小笠原氏)

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株式会社講談社 IT戦略企画室 デジタルソリューション部 副部長 小笠原 傑氏

最後に、G-gen とのパートナーシップについて、小笠原氏、塙氏、大竹氏はこう締めくくります。

「G-gen はレスポンスが早く、我々の漠然とした不安や要望にも柔軟に応えてくれました。技術ブログの発信力はもちろん、プロジェクト中の何気ない会話から新しい技術のヒントをもらえるなど、単なる委託先を超えたパートナーだと感じています。今後もその知見とスピード感に期待しています」

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