帯広発のベンチャーが描く酪農の未来 ~ Google CloudとG-genで挑む、第一次産業のDX ~

「インフラは事業に欠かせないものですが、収益面から見ると支出に占める比率は決して低くありません。そこをどうにか見直せないかというのは、当時ずっと考えていました」
株式会社ファームノート 執行役員 プロダクト開発本部 羽川晟史 氏
北海道帯広市で創業し、クラウド型牛群管理システムやウェアラブルデバイスで酪農・畜産業界のDXを推進する株式会社ファームノート。同社はセンサーデータの機械学習基盤として Google Cloud を採用し、そのインフラ運用とコスト最適化をG-genが支援しています。帯広から酪農の未来を変えようと挑む同社の技術選定と成果、そして現場での活用事例について、株式会社ファームノートの執行役員・羽川 晟史 氏、開発グループの西澤 昇吾 氏、さらに同社サービスを10年以上愛用する株式会社日昭牧場の取締役・西川 圭介 氏にお話を伺いました。
株式会社ファームノート様
2013年設立の農業IoTソリューションカンパニー。「生きるを、つなぐ」をビジョンに掲げ、クラウド牛群管理システム「Farmnote Cloud」や牛向けウェアラブルデバイス「Farmnote Color」の開発・提供のほか、ゲノム検査や受精卵供給、自社牧場運営まで幅広く展開しています。
- ※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
牛の個体データを軸に、大規模化する酪農・畜産の生産性を向上
株式会社ファームノートは、クラウド牛群管理システム「Farmnote Cloud」を起点に、首装着型センサーデバイス、ゲノム検査・受精卵販売、コンサルティング、牧場事業へと領域を広げてきました。現在、同社のシステムで管理される牛は約2,200顧客・国内飼養頭数の約1割に達しています。
血統情報、繁殖・治療の履歴など、牛にまつわるデータは膨大ですが、かつての現場では紙での管理が中心でした。Farmnote Cloudは、こうしたデータを電子化して活用したいという現場のニーズに応える形で生まれたプロダクトです。
近年は、離農の加速による戸数の減少、1牧場あたりの飼養頭数の増加、そして従事者の減少という業界の構造変化が進んでいます。限られた人数でより多くの牛を管理するうえで個体データのデジタル化と見える化はもはや不可欠となっており、Farmnote Cloudはその基盤を担っています。
さらに、頭数が増えるほど、牛の変化を人の目だけで察知するのは難しくなります。そこで同社はセンサーデバイスを開発し、牛の状態を自動で検知する仕組みを構築しました。例えば、体調の変化をアルゴリズムがリアルタイムに検知することにより、すばやい治療・対処によって経済的損失を防ぎます。
「センサーで膨大なデータを取得できますが、生産オペレーションで最も重要なのは活動量です。それが発情や疾病の検知に確実に結びつくよう設計し、画面レイアウトも逆算して構築しています」(羽川氏)

左から、株式会社日昭牧場 取締役 西川 圭介氏、G-gen 上級執行役員CRO 黒須、担当営業 遠目塚
センサーデータの機械学習基盤に Google Cloud を抜擢
もともと同社は他社クラウドを中心に構築していましたが、センサーデータを解析するアルゴリズムの実行環境として Google Cloud を採用しました。
「採用のきっかけは、センサー側のアルゴリズムを実行する環境を求めていたことです。約10年前の当時は、他社クラウドで機械学習をスムーズに動かすのがインフラ的に難しかったため、センサー領域に絞って Google Cloud を選定しました」(羽川氏)
以前は端末側で行っていた検知処理を、現在はクラウドへデータを集約してアルゴリズムを常時実行する構成へ移行。社内のデータ分析基盤には BigQuery が活用されています。

執行役員 プロダクト開発本部 羽川晟史 氏
Google Cloud 専業パートナーへの切り替えと、年間コスト約10%の削減
ファームノートでは、当初は別の事業者を通じて Google Cloud を利用していたといいます。その後、知人からの紹介を機に Google Cloud を専業とするG-genとの契約に切り替えました。当時の事情について、羽川氏と、同社開発グループの西澤昇吾氏は次のように振り返ります。
「インフラ周りは事業上とても必要ではあるけれども、収益面から言えば支出に占める比率が高い。ここをどうにかできないか、という状況だったんです」(羽川氏)
「ベンチャーあるあるだと思うんですけど、最初はスピード重視でインフラをとりあえず立てて、細かいところは後回しにしていました。G-genとの契約は、無駄なものを見直す取り組みの1つという側面もあったと思います」(西澤氏)
G-genは請求代行を担うとともに、ログの保持設定やストレージに残る不要なデータの整理といった改善点を提示しました。結果として、年間コストはおよそ10%削減されたといいます。その後、牧場運営を担う新会社の立ち上げに伴う Google Workspace のアカウント発行でも、G-gen経由での契約を選んでいます。

開発グループ 西澤 昇吾 氏
1,349頭を預かる日昭牧場での活用
ファームノートのプロダクトは、実際の酪農現場でどのような変革をもたらしているのか、その最前線の事例として、北海道大樹町にある株式会社日昭牧場の取締役・西川圭介氏にお話を伺いました。
同社は、平成8年に4戸の牧場が集まる形で酪農経営を開始し、今年で30年を迎えます。飼養頭数は1,349頭(2025年7月時点)、経営面積は340haに及びます。生乳生産を主軸に、飼料の生産や、子牛の育成までを自社で担う大規模牧場です。
これほどの規模ともなれば、日々の管理業務にかかる労力は計り知れません。西川氏によると、Farmnote Cloudが導入される以前は、飼育する牛についての情報が複数の紙台帳に散らばっており、現場に非効率を生んでいたといいます。
「以前は、繁殖の台帳が1つあって、血統情報や毎日の生産乳量はまた別の台帳があるという状態でした。そのため、1頭の牛の情報を得るのに、あちこちの台帳を見に行かなければならなかったのです」(西川氏)
広大な牧場を行き来しながら複数の紙台帳を照合する作業は、スタッフにとって大きな負担でした。しかし、クラウドを導入したことでこの状況は一変し、「スマホ1つで誰でもどこでも同じ情報をその場で見られるようになりました」と西川氏は語ります。現場の誰もが手元で瞬時に個体データへアクセスできる、風通しの良い環境が整ったのです。
さらに、Farmnote Cloudの活用は、単なる業務効率化にとどまらず、新しく入ったスタッフが仕事を覚えるためのツールとしても非常に役立っているそうです。
「日々のデータを自分で入力していると、現場でやっていることと実際に起きていることが頭の中でつながってくるのです」(西川氏)
日々の作業と牛の体調変化をデータとセットで把握できるため、新人が酪農のメカニズムそのものを理解する手助けになっているといいます。情報共有のクラウド化が、大規模牧場のオペレーションを根底から支え、スタッフの成長をも後押ししている好例と言えるでしょう。

ファームノート社のクラウド牛個体センサー「Farmnote Color」を装着した牛(於 日昭牧場)
クラウドとAIで第一次産業のDXを加速する
ファームノートは、個体管理にとどまらず、牧場経営そのもののデジタル化を見据えています。
「牧場が組織化・大規模化するにつれ、一般企業同様のオペレーションが求められます。Google Workspace の導入ニーズは確実に高まっていますが、ドメイン設定などの導入初期でつまずくケースも少なくありません。ここをサポートすることが第一次産業DXの鍵になると考えています」(羽川氏)
同社は自社グループの牧場で先行モデルを構築中です。「BigQuery に営業・生産データを集約し、Google Workspace 上で議事録を作成・統合して経営層へ共有する仕組みを整えています。現場の定性データを議事録自動化などで拾い上げ、経営に活かす構造を確立していきます」(西澤氏)
帯広のベンチャー企業が展開する個体データ管理の挑戦は、今や牧場経営全体のDXへと進化を遂げています。G-genは Google Cloud と Google Workspace の両面から、第一次産業の未来を拓く同社の歩みを強力に支援し続けます。
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