5万台のIoT車両のリアルタイム運用を支えるLUUPの Google Cloud 基盤

「Google Cloud と G-gen のサポートによって、私たちが本当に向き合うべき“数万台規模のIoT車両とのリアルタイム双方向通信”という難しい領域に、開発リソースを集中させることができました」
株式会社Luup CTO 岡田直道氏
電動キックボードや電動アシスト自転車など、電動マイクロモビリティのシェアリングサービス「LUUP」を全国で展開する株式会社Luup。ローンチ前の開発当初から Google Cloud を採用し、事業のスケールとともに活用の幅を広げてきました。同社が Google Cloud と G-gen のサポートをどのように事業成長へ結びつけているのか、CTO の岡田直道氏と、Software部 Engineering Manager の栗村貴尚氏にお話を伺いました。
株式会社Luup様
2018年7月に創業した株式会社Luup は、電動キックボードや電動アシスト自転車、座って乗れる電動シートボードなどを「電動マイクロモビリティ」と位置づけ、シェアリングサービス「LUUP」を展開しています。2020年5月のサービス開始以降、急速な成長を続け、現在はポート数1万7,000箇所以上、車両数は約5万台規模に拡大。札幌から那覇まで全国約40エリアで親しまれています。
- ※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
スタートアップならではのスピードを支えた Firebase からの出発
事業を素早く世に問うことが求められるスタートアップにとって、開発のスピードは生命線です。Luup がローンチ前の開発でまず選んだのは、Firebase を中心とするサーバーレスなインフラ構成でした。
同社CTOの岡田直道氏は、「創業当初は、エンジニアが私1人という状況でした。一人乗りの電動小型モビリティのシェアリングが実際に人々に使われるのかを、とにかく早く世に出して確かめる必要がありました。だからこそ、素早く開発できるBaaS(Backend as a Service)として Firebase を選んだのです」と当時を振り返ります。
サービスの成長にともない、Luup の技術基盤は自然に Google Cloud のコンポーネントにも広がっていきました。2020年に入社し、現在はSoftware部で Engineering Manager を務める栗村貴尚氏は、この経緯についてこのように語ります。「Cloud Functions での関数管理などから入っていって、1年以内には Google Cloud 全体を使うようになっていました。Firebase自体がGoogle Cloud上のプロダクトなので、無理なく活用の幅を広げられたのが印象的です」。
同社のアプリ向けバックエンドの多くはサーバーレスで構築できたため、Firebase で対応できていました。一方、車両と通信するようなプロトコルはサーバーを常時起動しておく必要があり、初期から Compute Engine などを併用していたといいます。認証やユーザー基盤、決済まわりを外部のマネージドサービスに任せられたことも、開発の負担を大きく軽減できた要因です。

CTO 岡田直道氏
「本当に向き合うべき領域」へ開発リソースを集中
渋谷を中心に電動アシスト自転車のみでサービスを開始した2020年当初から、Luup にとって大きな技術的チャレンジは、IoT 領域である「車両との通信」部分でした。他社サービスに頼れず自前で作り込む必要があるこのコア領域――具体的には、通信が不安定になりがちな屋外環境で数万台の車両と常時接続を維持し、バッテリー残量やロック状態をリアルタイムに把握する仕組み――に集中するため、同社では「ノンコア業務をいかにスマートに開発や運用をすることができるか」を重視しました。
「認証やユーザー基盤、決済といった部分を Firebase や外部サービスに任せられたからこそ、私たちが本当に時間を投資すべき車両通信のサーバー開発や、ライド時のユーザー体験の向上に集中できました」 と栗村氏。岡田氏も「 Google Cloud と Firebase だったからこそ周辺業務が効率化され、自社特有の強みに集中できました。アセットヘビーなこの領域で一気に事業を立ち上げ、6年間成長し続けられているのは、初期の開発コストを最適化できたことも大きな要因です」と語ります。
自分たちにしか作れない部分にエンジニアの力を注ぎ込み、そうでない部分はマネージドサービスやパートナーに委ねる。この考え方が、Luup の開発スピードと事業成長を支えてきました。

Software部 Engineering Manager 栗村貴尚氏
BigQuery を軸に、データが動かすサービスの裏側
Luup のサービスの利便性は、蓄積されたデータの活用によって支えられています。同社では BigQuery にデータを集約し、全社員が使えるダッシュボードを整備。最近では生成AIエージェントを導入し、自然言語で問いかけるだけで分析結果が返ってくる環境も構築しました。
蓄積されたデータは、主に以下の4つの領域で事業の最適化に活かされています。
需要予測に基づく車両の配置の均衡化
「このポートで借りたら安い」「ここで返したら安い」といった案内をユーザーに提示する仕組みです。予測には機械学習を用いており、過去の利用データに加え、複数の外部データを組み合わせて需要を見込んでいます。これにより「この先どの時間帯に使われそうか」を精緻に見込み、最適なポートへの返却を促しています。
オペレーションチームと連携した「車両の最適配置」
上記の予測データの活用先は、アプリを通じたユーザーへの料金インセンティブの提示にとどまりません。街を巡回して車両を再配置するオペレーションチームにも同じデータが提供されています。ユーザーの自発的な移動と、スタッフによる物理的な再配置という両輪で、無駄のない車両の最適配置を進めています。
稼働実績データを活かした部品調達とメンテナンス
データ活用は、ハードウェアの管理である車両の部品調達にも及んでいます。日々の稼働実績をもとに、部品ごとの故障の傾向を分析。勘や経験に頼るのではなく、データに基づく正確な在庫管理や配分、発注判断へと活かしています。
「隠れた需要」を可視化し、ポート設置の営業活動へ活用
効果の大きい場所にポートを置くための地理的分析にもデータを活用しています。「明確なランドマークがなくても、過去の移動データを見れば『ここは移動によく使われる場所だ』と見えてきます」と岡田氏は語ります。移動データから街の隠れた需要を可視化することが、営業担当者が新たなポートを設置する際の強力な裏付けとなっています。
導入から運用まで、間に立つ G-gen の安心感
Luup は複数の代理店を比較検討したうえで、G-gen をパートナーに選びました。岡田氏は選定の理由について、「サポートがしっかりしていそうだと感じたことと、スタートアップ向けの割引など条件面でも良い提案をいただいたこと」と語ります。
具体的な支援として栗村氏が挙げるのは、新しいツールを導入する際の勉強会の開催や、トライアルアカウントの発行です。「社内で事前に試したうえで、導入するかどうかを安心して判断できるのは大きいですね」。加えて、実際に障害やインシデントが発生した際にも、真っ先に相談でき早期にかなり粘り強く対応にご協力いただけた実績がある点を高く評価しています。「クラウド事業者へ直接問い合わせると、どうしても私たちの状況に即した回答にならない場合もあります。間に立っていただけるのは非常に心強いです」。
導入企業に寄り添い、判断と運用の両面を後押しする。G-gen のこうした伴走が、Luup が中核業務に集中できる環境を下支えしています。
「街じゅうを移動しやすく」なる未来へ、さらなる技術投資を
サービス開始から6年、電動マイクロモビリティは社会に少しずつ浸透してきました。岡田氏は「新しい乗り物が好きな層だけでなく、より多くの方に使っていただくため、わかりやすい料金プランや使いやすいユーザー体験を追求していきたい」と、事業のさらなる広がりを見据えます。
技術・インフラ面では、Firebase から使い続けてきた構成をアップデートし、事業のさらなるスケールを見据えた本格的なアーキテクチャ刷新に取り組んでいく方針です。「事業自体もそれを支える技術もハードルの高いもので、引き続きGoogle Cloud と G-gen の知見をお借りしたい」と栗村氏。物理的なオペレーションを支えるソフトウェアの設計に関わりたいエンジニアにとっても、挑戦しがいのあるフェーズです。スケールが進むなかで、運用コストを抑制しながら可用性の高いインフラへと最適化していく技術開発にも力を入れていく考えです。
生成 AI の活用も進んでいます。全社員が Gemini をはじめとした複数のAIツールを利用できる環境を整え、BigQuery の SQL 生成や社内の資料作成や情報取得、エンジニアのコード生成など、業務フローのさまざまな場面で、適材適所なツールを取り入れています。
自分たちにしか作れない領域に集中し、そうでない部分は信頼できる基盤とパートナーに委ねる。Luup はこれからも Google Cloud と G-gen とともに、電動マイクロモビリティを次世代の移動インフラへと育てていきます。
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