Google Cloud VertexAI を活用し、壁紙の似寄り商品提案業務の効率化へ
「Google の営業さんから旧トップゲート(現G-gen、以下G-gen)をご紹介いただきました。初回の MTG 後から数日後にはサンプルアプリを拝見させていただき、技術力の高さを目の当たりにしたことで、Vertex AI を活用した壁紙の似寄り商品提案システムの PoC を発注し、ご支援いただきました」
株式会社サンゲツ 森 祐輝氏
インテリア業界に共通する課題「似寄り商品提案業務」の効率化に向けて、Vertex AI を活用する新システムの構築に取り組む株式会社サンゲツ。PoC の流れと導入想定効果について、プロジェクトを担当した森祐輝氏に伺いました。
株式会社サンゲツ様
1849年創業の株式会社サンゲツは、壁装材や、床材、ファブリックなど、空間を彩る多彩なインテリア素材をメインに取り扱い、空間創造に関するソリューション提案を行っている企業です。同社は170年を超える歴史を通して培った技術と感性を活かして、住宅からオフィス、ホテルなど、あらゆる空間の創造に貢献。近年では、デジタル技術を活用した新たなサービス展開にも積極的に取り組んでいます。顧客のニーズを的確に捉え、高品質な製品とサービスを提供することで、人々の暮らしを豊かに彩り、快適な空間づくりをサポートしています。
- ※この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。
積極的なデジタル化により業務改革を進めるサンゲツ
嘉永年間の1849年に創業した「山月堂」をルーツに持つ株式会社サンゲツ。170年以上という歴史のなかでさまざまな改革を経験し、現在では「インテリア内装材におけるトップシェア企業」として社会に貢献しています。
同社では、特に2014年以降の10年間に積極的なデジタル化を進めてきました。コーポレート部門 情報システム部 システム二課長 森祐輝氏は、これまでの取り組みについてこのように語ります。
「まずは2015年に、Salesforce の導入による営業改革に取り組みました。その後2017年に Google Workspace を導入し、Gmail や Google Meet の活用を始めています。当時としては大きな変革でしたが、クラウド環境に馴染んでいたおかげでコロナ禍も大きな混乱なく乗り越えることができました。また2018年には、これまで約40年間使い続けてきたオンプレの基幹システムを大刷新しています」
ほかにも AppSheet 利活用プロジェクトによるデジタル人材の育成や、RPAプロジェクトによる年間約1万時間の削減など、確かな実績を残してきた同社。「一企業としてできる範囲で、挑戦し続けた10年でした」と森氏は振り返ります。
膨大な見本帳を目視で検索する「似寄り商品提案業務」が課題に
社内システムのデジタル化を進める一方で、依然としてアナログな方法で行われていたのが業界特有の「似寄り商品提案業務」です。たとえば「壁紙」についてユーザーや代理店から似寄り商品の問い合わせを受けた際、営業社員は膨大な数の見本帳を目視で検索して、それに回答します。検索に要する時間は、1人当たり平均1週間で約28分。なかには90分近く時間をかけている社員もいたそうです。
営業社員ごとに判断基準が違うことも課題でした。商品見本帳は色や質感、柄など、感覚的な要素で構成されているため、担当者によって「似ている」という判断基準が異なり、顧客への提案内容にばらつきが生じます。またサンプルは冊子で管理されており、更新頻度も早いため、検索にかなりの時間を要していました。
「あるべき姿は、ユーザーが検索からサンプルの取り寄せまで自分でできるようにすることです。AIを活用した新しい画像検索システムの導入によって、間接業務をできるだけ減らすとともに、お客様への迅速かつ的確な対応を実現したいと考えました」(森氏)
株式会社サンゲツ 森 祐輝氏
G-genの支援で、Vertex AI を活用した新システムを構築
新しいシステムの開発にあたり、同社が採用したのは Google Cloud の Vertex AI です。2023年10月に Google から G-gen を紹介され、技術支援を受けながら2回の PoC を実施しました。PoC の流れについて、森氏はこう説明します。
類似画像抽出結果
「第1次の PoC で採用したのは、画像認識に広く用いられるCNN 系モデルです。ただ壁紙や床材などの微妙な質感や柄の違いを判別するには精度が不十分でした。そこで第2次ではより高度な ViT を使い、画像を細かいパッチに分割して各パッチの特徴量を抽出するという手法を採用しました。ViT モデルのチューニングを繰り返し行うことで、最終的に精度の高い類似画像検索を実現しています」
画像AIだけでなく、色と属性で絞り込みをしているのも新しいシステムの特徴です。この「掛け合わせモデル」によって、似寄りの検索精度が向上したといいます。
「初回の打ち合わせを経て、二回目の打ち合わせ時にはサンプルアプリを準備してきた事に驚きました」
PoC の発注の経緯について、森氏はこう説明します。
「当初、AppSheet との連携を視野に考えていたため、API での提供は可能でしょうか?と要件としてお伝えしていたのですが、二回目の打ち合わせ時に HTML で作成してみましたとサンプルアプリを準備していただきました。数十枚提供していた画像を元に似寄り検索ができるまでを Web アプリで動く状態で見せられた時には本当に驚きました」
結果的に、サンプルアプリがあることで PoC の発注の意思決定に繋がったといいます。
システム構成図
1人あたり年間11時間の削減を想定
約190名のメンバーが参加した第2次 PoC では、一人当たり年間 約22時間(28分/週)かかっていた
似寄り業務を半分の11時間に抑えることができる試算が出来ました。
この業務に関わる社員は非常に多いため、「年間で2000万円を超える効果が見込める」といいます。
PoC に参加した社員からの声もポジティブな反応が目立ちました。「画像を読み込ませるだけで現行商品から似寄りの候補が出てくるのは、すごく助かる」というコメントがあったほか、「新システム導入によって似寄り検索業務が改善できると思う」という声は83.2%に達し、新しいシステムに対する期待の高さを伺わせます。
デジタルカタログ等のチップ画像のように綺麗なデータであれば納得のいく結果が出る一方で、スマートフォン等で撮影したデータでは、陰影や照明の関係で、人間の判断する結果とは異なるといった課題もあり、この辺りを如何に改善できるかが鍵になります。
社外への利用拡大や、似寄り商品提案業務以外への応用が今後の目標
これからの課題について、森氏はこう語ります。「やはり精度を上げていく必要があります。それからスマートフォンで使えるようにすることですね。サンゲツネットと連携して、検索結果からホームページに飛べるようにすると、ユーザーの利便性が高まると考えています。今は壁紙だけですが、床材とファブリックも追加し適応範囲を広げていきたいですね」
他にも、現在は社内で運用しているシステムを社外の人(ユーザーや代理店)が直接利用できる環境を整えること、APIを構築して似寄り商品提案業務以外にも応用することなど、さまざまな構想を持っているという森氏。最後に、業界全体への想いをこのように話してくれました。
「新しいシステムを通して、業界全体に貢献したいと考えています。石橋を叩きすぎていては何も変わりませんから、まずはチャレンジして、それをブラッシュアップしていくことが大切だと考えています」
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