Google Cloud の生成 AI を使ったチャットボットの構築で社内ナレッジの活用を目指す

Google Cloud の生成 AI を使ったチャットボットの構築で社内ナレッジの活用を目指す

「生成 AI のチャットボットを活用することで、これまで数分かかっていた情報検索が数秒でできるようになりました。これが10 件、20件と積み重なると、相当な業務の効率化につながると期待しています」
東洋建設株式会社 建築事業本部設計部部長 DXデザイングループ長 前田 哲哉 氏

社内に蓄積された膨大なナレッジを活用するため、Google Cloud の生成 AI を使ったチャットボットを導入した東洋建設株式会社。システム構築のパートナーとして G-gen を選んだ経緯と今後の課題について、東洋建設株式会社の前田哲哉氏に伺いました。

東洋建設株式会社様

東洋建設株式会社様

西宮市鳴尾地先を埋立て、一大工業港を建設することを目的として、1929年に設立された東洋建設株式会社。現在は国内の土木工事や建築工事、海外のインフラ建設などを数多く手がけ、今後、洋上風力へと事業領域を広げる総合建設会社です。「新しい豊かな技術で顧客と社会公共に奉仕することに努める」という経営理念のもと、AI などの最新技術を活用しながら社会と人々の暮らしに貢献し続けています。

  • この事例に記述した数字・事実はすべて、事例取材当時に発表されていた事実に基づきます。数字の一部は概数、およその数で記述しています。

業務の効率化と社内ナレッジの有効活用のため生成AIを導入

東洋建設は、国内外で数多くの海洋・陸上土木工事や建築工事を手がける総合建設会社です。Google Workspace の導入など業務のデジタル化を積極的に進めてきた同社ですが、DX デザイングループでは、従来から紙で行っていた設計図書のチェック作業などの業務の効率化や、蓄積されてきた膨大な社内ナレッジの有効活用という面で課題を抱えていました。

これらの課題を解決するため、DX デザイングループでは、生成AIを活用したチャットボットを導入しました。このチャットボットは、社内のナレッジデータベースと連携することで、設計図書のチェックや技術的な質問への回答などを迅速に行うことができます。
前田氏は、「導入効果の測定はこれからですが、今後、チャットボットによる回答精度の更なる向上と社内利用率の拡大を目指しています。さらに、社外情報との連携を強化することで、より高度な機能を備え、利便性の高いシステムへと進化させていきたい」といいます。

最新技術の活用により、プロジェクトの品質向上を実現

東洋建設では、倉庫・流通、生産、教育・文化・研究施設など、さまざまな建築物の設計から施工、工事監理までをワンストップで担当しています。そして、最新技術の導入により設計施工プロジェクトの品質向上に努めているのがDXデザイングループです。

DX デザイングループでは、これまで CG によるフォトリアルなモンタージュやアニメーションを用いて顧客との完成イメージ共有を行ってきました。また、クラウドプラットフォーム上で BIM モデルを共有するなど、情報共有の取り組みにも力を入れてきました。最近では、 Google Cloud  をプラットフォームとした情報共有システムを構築し、生成 AI の活用にも積極的に取り組んでいます。

前田氏は「生成AIは単なるツールではなく、設計者の創造性を刺激し、革新的なデザインを生み出すための強力なパートナー」と語ります。

設計図書のチェック作業を紙からデジタルワークフローへ

DX デザイングループでは、積極的に業務のクラウド化を推進しています。

2012年頃から BIM モデルやファイルデータの共有にクラウド活用を推進してきました。その後、クラウドサービスの機能向上に伴い、従来紙で行っていたデザインレビューや設計検証のプロセスをすべてクラウド上でやろうということになりました。

従来の方法では、多いときには400枚以上に上るという設計図書をすべて印刷して、グループ内で確認していたといいます。しかしメンバーの誰かが出張していたり、誰かひとりが確認に時間をかけたりしていると確認作業が止まってしまい、5〜6人が見るだけで10日以上かかることもありました。

この課題を解決するため、クラウド上に設計図書をアップロードし、全員が同じデータを参照して指摘事項を記述することにしました。従来のやり方を完全に変えるため、反発も覚悟していましたが、予想外にスムーズに進みました。そこで、設計図書のチェックと指示のやり方もすべてデジタルワークフローに移行することにしました。

このデジタルワークフロー化が、生成 AI のチャットボットを導入するきっかけになったと前田氏は振り返ります。

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東洋建設株式会社 建築事業本部設計部部長 DXデザイングループ長 前田 哲哉 氏

「指摘事項はデジタルワークフローで共有するため、すべてのやり取りはテキスト情報として記録されます。例えば、設計段階で『ここの避難経路は大丈夫か』『天井高は大丈夫か』といった指摘が出た場合、担当者は『この部分は○○という理由でこのように設計しました』と回答したり、ベテランの設計者は『ここは△△のように変更すべきです』とコメントしたりします。このように過去の質問と回答を蓄積することで、貴重なナレッジとして活用できることに気づきました」

こうした指摘事項のやりとりをAIに学習させ、それを利用することで「経験の浅い若手設計者のスキル向上に役立つのではないか」と考えた前田氏。そのころ登場してきた 生成 AI を試したところ「これは使うしかない」と感じたといいます。

イベントで印象に残った G-gen を 生成 AI 導入のパートナーに

生成 AI の活用ノウハウを集めるため、前田氏はさまざまな勉強会やセミナーに参加しました。

「Google Cloud Next Tokyo '23 というイベントに参加しました。そこで出会ったのが G-gen でした。調べてみると、ブログや技術レポートを多数執筆されており、ぜひ一緒に仕事ができたら面白いことができそうだと感じました」と前田氏は語ります。

G-gen 以外にも複数のパートナーに声をかけたのですが、前田氏は「G-gen は本当にフレンドリーで、こちらのニーズに寄り添った提案をしてくれました」と振り返ります。

加えて、Google Cloud の生成 AI も印象的だったそうです。

「約1年前、 Google の生成 AI を使った際には、返される回答が少しおせっかい気味だと感じました。しかし、最新の Gemini Pro は非常に優れた回答を返してくれるだけでなく、その根拠も示してくれるため、"すばらしい!"という印象を受けました」

G-gen とのプロジェクトは2023年12月にキックオフし、Vertex AI Search の構築、レクチャーと QA 対応などを進め、2024年1月に仮運用を開始、4月中旬より運用を開始しました。また、チャットボットを既存の Google Workspace の Google Chat に組み込むため、情報システム部との連携が必要でしたが、経営戦略グループ 情報システム部課長代理 喜納友祐氏は、「G-gen に全てお任せできたため、特にサポートする必要はありませんでした」とプロジェクトを振り返ります。

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東洋建設株式会社 経営戦略グループ 情報システム部課長代理 喜納 友祐 氏

学習データの整備で、回答の精度向上と利用者の拡大を目指す

導入の効果について、前田氏は「正直これから」といいます。

「生成 AI に学習させるための指摘事項データベースを構築していますが、現状ではその更新が十分とは言えません。試行開始時の学習では、社内に蓄積された限られた情報のみを使用していましたが、今後は指針やマニュアルなどの関連情報を精査し、学習データを充実させることで、RAG 機能の強化と回答精度の向上を目指します。すでに、デジタル庁が公開している法令データ、社内の災害・不具合事例、社内規定集などを Google Cloud に取り込み、運用を開始しています」。

チャットボットを活用した検索が本格的に普及すれば、これまで数分かかっていた情報へのアクセスや要約が、数秒で完了するようになり、大幅な効率化が期待されます。

「今後の課題のひとつは、利用者の拡大です。まずは設計部内でチャットボットの利用率向上を目指し、将来的には社外のノウハウも取り込み、プロジェクト関係者全員が利用できるシステムへと発展させていきたい」といいます。

また生成 AI に関して、社内ではまだツールが統一されていないと経営戦略グループ 情報システム部長 潮見貞治氏は指摘します。「設計部では Vertex AI Search を使っていますが、他の部門では他のツールを使っています。より効率的にツールが使用されるように、各部門と協議を重ねながら進めていきたいです」

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東洋建設株式会社 情報システム部長 潮見 貞治 氏

生成 AI の導入によって一定の効果を得た東洋建設ですが、同社の DX に関する取り組みはそれだけではありません。前田氏は、「今後は Looker や Looker Studio を活用し、様々なデータを分析することで、埋もれている価値を可視化していきます。G-gen にも、改めてご相談させていただきます」と、その先を見据えています。

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この課題を解決したサービス

Google Cloud ではじめる Generative AI 活用支援ソリューション

Google の Generative AI (生成 AI) の活用を、Google Cloud 専業インテグレーター G-gen のエンジニアが技術支援するソリューションです。

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