データドリブン経営とは?実現に向けた4ステップや成功事例まで徹底解説!
- データドリブン経営
近年、データドリブン経営という言葉をよく耳にするようになりました。データに基づいて意思決定を行う経営手法のことであり、データドリブン経営を実現することで企業は様々なメリットを享受できます。
ただ、データドリブン経営のイメージを掴めていても、正しく内容を説明できる方は少ないのではないでしょうか。そこで本記事では、データドリブン経営の概要、メリット、実現のための4ステップ、成功事例まで一挙にご紹介します。
目次
データドリブン経営とは?
データドリブン( Data Driven )とは、業務で扱う様々なデータを使って意思決定を行うことです。データドリブンという言葉が誕生する前から、企業はデータを基にした意思決定を実践していましたが、近年の急速なデジタル化により、取り扱うデータの量や種類は大幅に増加しています。
また、消費者のニーズも多様化しているため、顧客満足度を向上させるための企画立案や意思決定の難易度も高まっています。これらの理由から、膨大かつ多様な情報から必要なデータを適切に取り出し、それらを活用するための手法としてデータドリブンが生まれました。
つまり、データドリブン経営とは、データドリブンの手法によって取得したデータを基に経営を行うことであり、企業がさらなる成長を遂げるために欠かすことのできない考え方です。データドリブン経営は様々な情報を裏付けとして経営判断を行うため、人間の勘や経験に頼らない信頼性の高い意思決定が可能になります。
多くの価値観が混在する現代社会では、意思決定の場面において主観を排除し、客観的なデータに基づく意思決定が求められます。このような背景から、データドリブン経営は注目を集めており、実際に多くの企業が実現に向けて試行錯誤しています。
データドリブン経営のメリット
データに基づいた意思決定ができる
従来の日本企業では KKD による意思決定が尊重されていました。 KKD とは、勘(K)と経験(K)と度胸(D)のことであり、経営者が自身の判断で様々な意思決定を行なっていました。しかし、情報量が増加し、顧客ニーズが多様化した現代においては、 KKD による意思決定だけでは判断を誤る可能性があります。
その点、データドリブン経営はデータを活用して客観的な判断を行うことができるため、常に実情に即したアクションを検討できます。刻一刻と変化する現代社会では、データに基づいた意思決定が可能なデータドリブン経営が求められていると言えるでしょう。
企業成長を促進できる
データドリブン経営は社内に蓄積されている多くのデータを分析し、その分析結果を意思決定に活用します。そのため、様々なデータを分析するプロセスにおいて、自社の強みや課題をデータから見える化することができます。
つまり、データドリブン経営を実践することで、自社の強みをさらに伸ばしたり、逆に課題を発見して解決に動くことが可能になります。結果として、 KKD による意思決定ではわからなかった部分まで把握でき、今後の企業成長に繋げることができます。
顧客理解を深められる
企業活動を行う上で顧客理解はとても重要なポイントです。顧客が何を求めているのかを把握できれば、自社の製品やサービスをより良いものに改善することができます。
データドリブン経営によりデータ活用が進めば、精度の高い顧客意見やフィードバックを情報として蓄積でき、自社運用に反映させることが可能です。このように、顧客理解を深められる点もデータドリブン経営のメリットだと言えるでしょう。
データドリブン経営を支える3つの要素
データの活用基盤
データドリブン経営はデータ活用が前提となる経営手法であるため、データそのものを蓄積・管理するための活用基盤が必要になります。この仕組みは一般的にデータウェアハウス(DWH)やデータマネジメントプラットフォーム(DMP)と呼ばれており、自社の目的に合わせて最適なものを選択することが重要です。
データの分析ツール
データドリブン経営では、蓄積したデータを意思決定に役立てるために様々な分析を行います。データ分析を行うためのツールは多く存在しますが、有名なものとしては BI ツールが挙げられます。
BI ツールとは、「 Business Intelligence ツール」を略したものであり、膨大なデータを管理・集約し、必要に応じて分析まで行うことができるサービスです。代表的な BI ツールとしては Tableau が挙げられます。
身近なものでは Microsoft の Excel や Google の Google スプレッドシートが簡易的な分析ツールとして利用されることもありますが、どちらも BI ツールではありません。そのため、効率的にデータ分析を進めていくためには、データ分析に特化した専門ツールを使うのがオススメです。
BI ツールに関しては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
BI ツールとは何か?メリット、デメリット、活用事例まで、一挙に紹介!
データドリブンな企業文化の醸成
データドリブン経営は組織全体で取り組むものであるため、全社的にデータドリブンな企業文化を醸成する必要があります。データドリブン経営の概念やメリットを社員に伝える機会を設けて、協力体制を得られるように工夫してください。
組織全体の方向性が統一されることで、誰もがデータを有効に活用できるようになり、データドリブン経営の導入効果を最大化できます。このとき、経営層や役職者など、キーマンを味方に付けておくとスムーズに進むことが多くなります。
データドリブン経営を実現するための4ステップ
ステップ1.データ収集
データドリブン経営に向けた最初のステップはデータ収集です。社員の個人 PC 、ファイルサーバー、クラウドストレージなど、社内に点在した様々なデータを一箇所に集約します。
企業によってはデータ量が膨大になることもありますが、この時点ではデータの取捨選択はしないことをオススメします。取得するデータを限定してしまうと活用できるデータ量も少なくなってしまうため、データドリブン経営における判断材料が不足するリスクがあります。
ステップ2.データ可視化
データ収集が完了したら、それらのデータをわかりやすく可視化します。データを効率よく分析することが可視化の目的なので、表やグラフなどを用いてビジュアライズしておくと効率よく情報を整理できます。
Excel でデータを可視化することも可能ですが、ツールを導入した方が作業効率は上がります。例えば BI ツールであれば、データを取り込むだけで自動的にグラフや表を作成してくれるので、自社の生産性向上にも繋がります。
ステップ3.データ分析
データの可視化が完了したら、次にデータ分析を行います。自社の目的に応じて求めたい結果を得るために、様々なデータをあらゆる観点から分析していきます。元々は同じデータでも、どの角度から分析するかによって結果は大きく異なります。
そのため、最近ではデータサイエンティストというデータ分析の専門家が活躍しており、バラバラに存在しているデータを多角的に分析し、お互いの関連性や傾向などを導き出しています。データ分析で有効な結果を得られれば、それは競合他社に差をつけるための価値ある情報になります。
ステップ4.意思決定
最後に、データ分析で得られた結果をもとに意思決定を行います。自社の強みや課題、顧客ニーズ、市場動向、競合他社の状況など、あらゆる要素を加味しながら最適なアクションを検討します。
最終的な判断は人間が行うため、意思決定プロセスのすべてを自動化することはできませんが、データドリブン経営では判断に必要な材料はすべて自動的に収集・分析され、それらのデータに基づいた経営判断を効率的に行うことができます。
データドリブン経営の成功事例
テーマパーク
とある大型テーマパークでは、データドリブンを活用したマーケティングおよび企業経営を実現しています。
従来、同社ではテーマパークの来場者から匿名でサンプリングを行い状況を把握していましたが、さらに広範囲かつ長期的な目線のマーケティングにシフトするためにデータドリブンの考え方を採用しました。それまでは窓口をはじめとするオフラインでのチケット購入者が多かったですが、 web 予約の改善に取り組んだ結果、 EC サイトにおけるチケット販売の割合は3年間で3倍にまで増加したそうです。
web 経由でのチケット購入は消費者の属性を特定できるため、この改善により活用できるデータ量はさらに増えました。加えて、園内にセンサーやビーコン、 GPS などを設置し、顧客動線を徹底的に分析することで、さらなる顧客満足度の向上を実現しました。
同社が成功したポイントは、「データドリブン」と「データファースト(顧客セカンド)」を履き違えなかった点にあります。あくまで優先すべきは顧客体験であり、来場者の満足度を高めるプロセスの中でデータを取得することを意識していました。
これらの工夫により、テーマパーク来場者の満足度向上とデータドリブン経営に必要なデータ取得の両立に成功しました。
旅行会社
とある旅行会社では、自社が保有するデータから顧客の渡航目的や購買理由を特定し、その結果を基にして次のアクションを検討するデータドリブンなマーケティング戦略を採用しています。
同社はデータドリブン経営を効率的に行うために専門部署を立ち上げており、「統合データ基盤」「顧客分析」「マーケティングアクション」の3つにチームが分かれています。統合データ基盤チームが顧客情報を整理・統合し、そのデータを顧客分析チームが分析し、マーケティングアクションチームが次回アクションを検討する流れです。
そして、実行したアクション結果は再び統合データ基盤チームに戻ってくるため、このサイクルを回すことでデータドリブンの連続性を担保しています。また、顧客分析チームは統計解析を扱う「量的分析チーム」と、お客様のニーズを読み解く「質的分析チーム」に分かれています。
単なる統計解析だけでなく、データを基に経営目線・顧客目線でニーズや課題を検討できるチーム編成となっている点が、同社がデータドリブン経営を成功させたポイントだと言えるでしょう。
データドリブン経営にオススメのツール
本来、データドリブン経営を実践するためには、数多くのツールが必要になります。
例えば、以下のようなものが挙げられます。
- データウェアハウス(DWH)
- BI ツール
- CRM
- SFA
- MA
以下、それぞれのツールについて概要をご説明します。
データウェアハウス(DWH)
データウェアハウス(DWH)とは、業務に関する情報をまとめて保管しておくためのデータベースです。様々なシステムからデータを保存し、それを分析するために整理する、データの保管庫のようなイメージです。
以前まで、データ管理は容易なことではなく、目的のデータを探すだけでも大変な労力が必要でした。さらに、古いデータは削除するなどのメンテナンスも発生しており、データ管理にとても多くの時間を費やしていたため、経営判断へのデータ活用は、ハードルが高いものとして避けられてきました。
しかし、データウェアハウス(DWH)の登場によって、大容量データから該当情報を抽出したり、重複を避けてデータを保存したりできるようになったため、従来の課題を解決することができるようになりました。企業が保有するデータ量が増加し、ビックデータ活用が求められる昨今のビジネスにおいて、データウェアハウス(DWH)は不可欠なツールと言えるでしょう。
データウェアハウス( DWH )については、以下の記事で詳しく解説しています。
データウェアハウス( DWH )とデータベースとの違いとは?5つのポイントを理解して最適なサービスを選択しよう!
BI ツール
BI ツールとは、「 Business Intelligence ツール」の略語であり、膨大なデータを管理・集約し、必要に応じて分析まで行うことができるサービスです。企業のビッグデータ化が進む現代において、 BI ツールの存在価値は年々高まっています。
データを可視化し、自社の状況を正しく把握することで、今後に向けた改善案を検討することができます。また、分析結果を戦略に反映することで、より生産性の高い経営を実現することが可能になります。
BI ツールには、データの共有、分析、シミュレーションなどの機能が搭載されています。様々なデータをダッシュボードなどでわかりやすく表示できるため、スピード感をもった意思決定を実現します。さらに、マーケティング観点での統計分析やシミュレーションも可能であり、企業戦略の方向性を考える上で重要な役割を持っています。
CRM
CRMは「 Customer Relationship Management 」の略語であり、日本語では「顧客管理システム」と呼ばれています。 CRM は顧客との関係構築を目的とした営業マネジメントツールであり、データドリブン経営においても重要な意味を持っています。
顧客と良好な関係を築き、さらなる購買に繋げるためには、顧客の状況を正しく把握し、そのデータを最大限に活用する必要があります。そこで CRM を使うことで、顧客との取引状況や接触履歴などを管理でき、効率的なアクションを検討することが可能になります。
SFA
SFA は「 Sales Force Automation 」の略語であり、日本語では「営業支援システム」と呼ばれています。 SFA は商談開始から受注までのプロセスを可視化し、活動進捗を管理するためのツールです。
顧客への提案プロセスや商談結果は会社の重要な情報資産の一つですが、これらを営業が毎回手作業で記録していては膨大な工数が発生します。そこで SFA を活用することで、記録を入力する手間を削減でき、後から振り返るときも見やすいレポートで確認可能になります。
データドリブン経営はデータにもとづいた意思決定を行うため、活動進捗を見える化できる SFA は重要なツールの一つであると言えるでしょう。
MA
MA は「 Marketing Automation 」の略語であり、マーケティング活動を自動化するためのツールです。商談に繋げるための有効なリードを獲得するためには、従来のアナログな営業だけではなく、 Web を活用したデジタルな手法によるアプローチが必要です。
例えば、マーケティングメールを複数顧客へ一斉に配信して、開封状況や資料のダウンロード状況を可視化し、その属性に応じてインサイドセールスがフォローコールを行うような運用が考えられます。このように、様々なデータにもとづいたマーケティング活動を支援することが MA の大きな役割となっています。
データドリブン経営をスモールスタートするには?
前章でご紹介したツールをすべて用意するのは簡単なことではありません。そのため、データドリブン経営を一気に進めるのではなく、無理なく段階的に実現していきましょう。
まずはデータドリブン経営のスモールスタートとして、「データウェアハウス(DWH)」と「 BI ツール」を先行して導入してください。この2つのツールがあれば、データドリブン経営に最低限必要なデータの蓄積、分析、可視化を行うことができます。
そこで本章では、データドリブン経営のスモールスタートに必要な「データウェアハウス(DWH)」と「 BI ツール」について、それぞれオススメのソリューションをご紹介します。
BigQuery
BigQuery は Google Cloud (GCP)で提供されているデータウェアハウス(DWH)です。 Google Cloud (GCP)とは Google が提供するパブリッククラウドであり、 Microsoft の Azure や Amazon の AWS と同じ位置付けのサービスです。この Google Cloud (GCP)の一機能として BigQuery が内包されています。
BigQuery はデータウェアハウス(DWH)であるため、様々なデータを整理した形で保管しておくことができます。さらに BigQuery はビッグデータ解析サービスとしても利用できるため、データ分析にも有効に活用できます。通常では長い時間かかるクエリを、数TB(テラバイト)、数 PB(ペタバイト)のデータに対し数秒もしくは数十秒で終わらせることができ、超高速な処理が大きな特徴のサービスです。
また、データの処理速度が速いだけではなく、「データベースの専門知識がなくても扱える」、「コストパフォーマンスが高い」など、 BigQuery には様々なメリットがあります。もちろん、 Google Cloud (GCP)の多彩な他サービスともシームレスに連携できるため、あらゆるシーンで企業の業務効率化に寄与します。
BigQuery に関しては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
超高速でデータ分析できる!専門知識なしで扱えるGoogle BigQueryがとにかくスゴイ!
Looker
Looker は次世代型の BI ツールと呼ばれています。そもそも BI ツールとは企業に蓄積された大量のデータを分析し、分析したデータを可視化できるものです。データを可視化することで、企業の経営活動の指針になったり顧客データの分析ができます。
次世代型 BI ツールと呼ばれているのは、今までの BI ツールのメリットを詰め合わせたツールになっているからです。今までの BI ツールを振り返ると、出始めの頃は知見があるスペシャリストしか扱えないものでした。
その後登場した BI ツールは、誰にでも扱えるのをコンセプトとしたため、気軽にデータ分析が可能となりました。しかし、誰にでもデータ分析ができる反面、よりマクロな視点でのデータ分析やセキュリティ面での不安が残りましたが、 Looker は今までの課題点を解消しつつメリットだけを組み込んだのです。
モデリング言語(定義されたルールにしたがって構造された人工言語)の習得のしやすさや、 Git (プログラムのソースコードなどの変更履歴を記録するバージョン管理ツール)との連携など、 Looker には嬉しい特徴が複数備わっており、実際に多くの企業が Looker を活用してデータの可視化に取り組んでいます。
Looker に関しては、以下の記事で詳しくご紹介しています。
次世代BIツール「Looker」の概要と導入時の注意点をご紹介!
まとめ
本記事では、データドリブン経営の概要、メリット、実現のための4ステップ、成功事例まで一挙にご紹介しました。
企業が保有するデータ量が増加し、顧客ニーズが多様化している現代においては、データに基づいた意思決定を行うデータドリブン経営の重要性が高まっています。データドリブン経営を実現することで、企業成長や顧客理解など、多くのメリットを享受できます。
データドリブン経営をスムーズに進めるためには、各種ツールの利用がオススメです。効率的にデータを活用できることに加えて、自社の作業工数を大幅に削減でき、生産性の向上にも繋がります。
今回は BigQuery と Looker の2つをご紹介しましたが、どちらも Google が提供するサービスであり、とても高機能かつ使いやすいツールとなっています。利用には Google Cloud (GCP)の契約が必要ですが、 Google Cloud (GCP)は他にも多彩なサービスを搭載しているため、様々なシーンにおける業務効率化に寄与します。
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